Jan 28, 2018 column

80年代アニメの傑作『ザブングル』『イデオン』から戦艦、飛行機まで! 大人がハマる、食玩プラモデルの世界

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続く第2弾はこれまた80年代の名作中の名作アニメ『伝説巨神イデオン』の『イデオン』。これもそれぞれのメカが分割されており、全4種が変形合体しイデオンにできる。 その後も『ザブングル』シリーズ後半の主役メカ『ウォーカーギャリア』が。80年代アニメでは『機甲界ガリアン』から『ガリアン』が発売された。 over40のアニメファン、キャラクタープラモファンが驚喜するのは当然だろう。なにしろ30数年ぶりの『イデオン』『ガリアン』の新製品プラモだ。加えて驚いたのはビデオアニメ『機甲界ガリアン 鉄の紋章』に登場する『鉄巨神』までもがキット化された。 この『ガリアン』は1個2,000円・全2種(『TV版ガリアン』と『鉄巨神』)だったが、『鉄巨神』の模型はこれまで価格も高く入手も難しく製作も上級者向けとなるマニア向けのガレージキットでしか出てこなかった物で、「可動するプラモデルがこの低価格で!」というのは夢のような出来事だ。 30代向けにも胸が熱くなるアイテムが出ている。『勇者王ガオガイガー』はあの複雑な変形・合体を再現。また、もともと戦隊ものの多かったミニプラの流れを30歳以上の大人に向けた『超獣戦隊ライブマン』(88)の『ライブロボ』や、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92)の『大獣神』『ドラゴンシーザー』なども出ている。

さらに昨秋には名作ロボットアニメ『無敵超人ザンボット3』がこれまた変形・合体可能なプラモデルとして登場した。まさか21世紀にこのような代物が、しかも食玩で登場することになるとは思わなかった。「時間はオタクに味方する」と言った人がいるが、まさにそれだ。

ちなみにこの『スーパーミニプラ』シリーズは、バンダイと言ってもガンプラを担当している「ホビー事業部」ではなく「キャンディ事業部」という部署から発売されており、設計も製造も異なっている。プラモデルの部署が作った製品ではないとはいえ、しかし可能な限りの色分けされたパーツで構成されており、組み立て、補色部分に付属のシールを貼って完成させるだけでも見栄えのする物ができあがる。このあたりこそは近年の多くのキャラクターキット同様の設計がもちこまれており、「プラモデルは塗装とか出来ないし・・・」という人にも手が出しやすい。僕の周囲を見ていても、非モデラーの層にもかなり売れている。 もちろん、プラモデルであることをメーカー側も意識しており、素材も食玩でよく使われるような・・・例えばプラモ食玩の元祖とも言える『ビッグワンガム』のプラモで使われていたような塗装や接着の難しいポリエチレン系素材などではなく、普通のプラモと同じ物が使われている。そのため塗装をして仕上げることも可能だ。(ただし『ガオガイガー』や『大獣神』など戦隊系はABS素材を主として、ちょっと違うために要注意。)

うれしいラインナップが続いているが、「でもナゼそれが食玩で出るの?」「プラモデルとして流通すればいいんじゃない?」という疑問もある。これは「食玩でコレが出たら面白いだろう」という企画性に起因するところが大きいのはもちろんだが、流通面でもメリットがある。ガムを1個入れて(みんな、捨てないで食べよう)食玩にすることで全国各地の多くのスーパーのお菓子売り場に流通させることが可能となる。雑誌のインタビュー記事によれば全4種などの分割スタイルになっているのも、1個の価格を安くすることでスーパーが取り扱ってくれるものになるのだそうだ。確かに、そうでもなければ『鉄巨神ガリアン』のプラモなんて、地方のスーパーのオモチャ売り場のプラモ棚に並ぶようなことはまずあり得ないだろう。 が、難点もあり、それは「あくまで食玩」として販売されている物ゆえに、一度売り切れた場合の再生産がなかなか難しいことだ。

10数年前に食玩の世界では「このサイズ、この安さで、このクオリティの高さ!」という塗装済み完成品フィギュアの一大革命が起こった時期があった。そしていま起こっているのがプラモ革命だ。この流れが今年以後どのようなことになっていくのか全く目が離せない状態になっている。お手軽さもあり「週末にちょっと何か手慰みを・・・」という人にも、うってつけだ。この機会に何か1つ組んでみてはどうだろう。

しかし、今のところ意外でならないのは、「1/144くらいのサイズの『ガールズ&パンツァー』仕様(学校・チームのデカール入り、かつデフォルメではないもの)の小さい戦車のプラモ食玩」って、絶対にどこかが出すと思っていたのだけど、今のところその気配が無いなあ。出たらバカ売れ必至だと思うんだけど・・・。

文 / 岡野勇(オタク放送作家)