その視点で見たとき、TV版『リトルウィッチアカデミア』は別の見え方もしてくる。TVシリーズでは『アニメミライ』版と劇場版に比べ、アッコの“何も出来ない新人”である面がより強調されている。何しろ彼女は魔女に憧れてはいるものの、同級生らと異なり何一つとして魔法がまともに使えない。それどころか魔女の基本であるホウキに乗って空を飛ぶことすら出来ない。落ちこぼれなのではなく“何も出来ない”のだ。
その姿はまさに世の中のあらゆる場にいる、そして僕たちもそうであった“新人”そのものだ。やりたいことがあり憧れて自分で選んだ道。だけど、今の自分はそれに届く実力も能力も無い。“才能”とやらを信じ、一足飛びにそこに行こうとする者たちは山ほどいる。けど現実は、そんな簡単なことじゃない。周りを見れば自分より出来る者がおり、後ろを見れば誰もいない。
ドタバタ劇の中でアッコが勇み足で騒動を起こしてしまう姿、くじけずに挑み続ける姿、多くの友人ができていく姿。正直、放送が始まったとき、2クールは長いのではないかと思った。だが、見終えて思ったのは、アッコの成長をゆっくりと…だが、一歩づつ確実に進んでいく姿として描いたからこそ、クライマックスのあの感動に繋がったのだと強く感じた。まさにTVシリーズならではの醍醐味だ。突如降りかかった危機に対し、アッコだけが立ち向かうことを叫ぶ。すでに彼女は“何も出来ない”のではない。“諦めない”ということを“出来る”のだ。
見ていてつくづく感じたのは、選んだ道を進んでいくときに最も怖ろしいのは“才能”という曖昧なものが自分に無いことではない。情熱を失うことだ。僕からすれば情熱を失わず持ち続けられる人は、それだけで超人だとすら思う。そのことを再認識させられた作品だった。
余談だが、この作品の吉成曜、大塚雅彦といったスタッフらがGAINAX時代に携わった『天元突破グレンラガン』が放送10周年を記念し、7月にBSやUHF系列で再放送が始まる。仕事で疲れた人には見るだけで栄養ドリンクなんかよりも力を与えてくれる作品なので、ぜひともお薦めしたい。これらと併せて見たときに、『リトルウィッチアカデミア』に至るまで、このスタッフたちが何も見失わずに突っ走っていることそのものが感じられるはずだ。
今シーズンのTVアニメでは、この『リトルウィッチアカデミア』で感じた“成長していくことを描いた面白さ”を感じた作品がもう1つある。 といってもこちらの作品はまだ放送途中であるが、『サクラクエスト』だ。