『正解するカド』(http://seikaisuru-kado.com/)
突如、羽田に現れた謎の巨大物体。そこから現れた謎の知性体と人間とのコンタクトから始まるSF作品だが、毎回なにかしら驚かされる展開があり目が離せない。毎週のシリーズ物を見る面白さに満ちている。人類以外とのコンタクト、政府や世界の反応。知性体はある提案を人類に出してきたが、今の現実世界の問題を上手く反映させたものとなっており、大人向けの作品だ。
制作している東映アニメーションは日本の手描きアニメを牽引してきた老舗スタジオでもある。だが決して守りに入ること無く、09年の劇場作品『きかんしゃやえもん』以降、フルCGの作品にも精力的に取り組んできた。2012年に公開された劇場作品『アシュラ』では、鉛筆で描いたような画を全編CGで表現した。14年の劇場アニメ『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(アニメーション制作:グラフィニカ)ではセルルックCGで製作。これは「普段アニメを見ない人は手描きだと思うのでは?」とすら思わされる映像になっており驚かされた。上映後に僕の後ろにいた若い子はヒロインの可愛さの話ばかりしていたが、この反応は同作が3DCGによるアニメ画美少女の表現に成功した証だったといえる。 その東映アニメーションが挑んだのがこの『正解するカド』だ。同社にとって、セルルックCGを主としてTVシリーズに挑むのは初の試みとなる。 とはいっても『正解するカド』は、作品のキャラクター全てに3DCGを使っているわけでは無い。部分的には手描きによるキャラクターやカットも使っている。CGはまだコストがかかることもあり、3割ほどは手描き作画によるものだそうだが、作り手の使い分け・使い方が上手いこともありアニメファンでも気づきにくい。 見た感じでは2D調キャラクターの自然さに驚かされつつ、異物体「カド」のCGならではの不思議な表現などがマッチしており、ストーリーのみならず映像からも目が離せない作品となっている。
前述したような「手描きとセルルックの違い」を比べて見てみたい人にわかりやすく、最適な作品もある。『フレームアームズ・ガール』(http://www.fagirl.com)がそうだ。
壽屋が発売しているオリジナルの美少女型プラモデルを原作としたアニメだが、この作品では人間キャラクターは手描き。15cmほどの人型模型であるフレームアームズ・ガールはセルルックCGで表現されている。異なる表現手法のキャラクターが同時に存在しているため、手描きとセルルックというものの違いがわかりやすい。 この作品では大きさの違いや、そもそもの人間と模型の質感・動きの違いなどをこれによって効果的に描き分けている。
冒頭に書いたように、セルルックCGは日本ならではのアニメ技術であり、人によっては「日本のアニメの未来を担う技術」だとする人もいる。たぶんそれは間違っておらず、今後も進化し、日本のアニメの一端を担っていくだろう。 だが、これも冒頭に記したようにアニメーターが生み出す“動き”の面白さこそが日本アニメの魅力そのものでもあることは不変の物だ。今期のTVシリーズにはその魅力が存分に楽しめる作品もある。 例えば『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』(https://shingekinobahamut-virginsoul.jp/)だ。
ソーシャルゲームを原作とするファンタジー作品で、14年に放送された『神撃のバハムート GENESIS』の第2シリーズとなる。前シリーズはアニメファンならクレジットを見るだけで驚くようなアニメーターの名が並んでいた作品で、そのクオリティの高さが話題を呼んだ。当時ネットで、アニメ業界の人が「腕の良いアニメーターが全員『バハムート』にもっていかれた」という発言をしているのを見かけたが、冗談にしても納得がいくほどだった。