2017年4月期のアニメも放送が5話ほどまで進んだ。
安定の面白さを見せている『進撃の巨人』『弱虫ペダル』『夏目友人帳』といった人気作品の続編はもちろんなのだが、今期のアニメを見ていて「おや?」と思わされたのが3DCGの使い方の安定化だ。
アメリカをはじめとした海外のアニメーションがCG全盛になってからかなりが経つ。むしろ、僕らが多く目に出来る海外の劇場アニメーションではいまや手描きの作品が珍しくなってしまった。 一方、日本のアニメの主流は今でもやはり手描きであり、アニメーターが生み出す“動き”の面白さこそが日本アニメの魅力そのものであるとも言える。 海外の日本アニメファンが日本のアニメに感じる魅力もそこだろう。
だが、デジタル化の波がアニメ表現の世界にも大きなうねりとなって訪れるようになってから10数年が経つ。 その10数年で、日本は独自の面白い表現を生み出した。「3DCGで手描き(2D)アニメ風の映像を再現する」という表現手法であり技術だ。従来のセルアニメ風であることから「セルルックCG」「セルルックアニメ」とも呼ばれる。この手描き風のCGというのは見渡した限り日本独特のもので、まさに手描きアニメにこだわり続け、その魅力がわかっている国だからこそ生まれた独自の手段だ。
ものすごく簡単に説明すると、従来の手描き(2D)は紙に描かれた画を、何枚も連続させることで動きを生み出す。 対してセルルックは、見た目こそ2Dの画に見えるが、その実態はコンピュータ上で作られた3DCGの“人形”のようなもので、この人形を操って“2Dの画のような動き”を表現した物になる。
セルルックCGによる作品は劇場作品・TVシリーズともに増加しており、深夜のTVシリーズでも最近は毎シーズン1作ほどはこのスタイルで制作した30分作品がある。5分などのショート作品を含めればもっと多い。昨年に話題となった作品でも『ブブキ・ブランキ』『亜人』などがあり、前シーズンに話題となった『けものフレンズ』もそうだ。 すでに何年も前から使われ始めている技術だが、本格的に注目されるようになったのはおそらく13年に放送されたTVアニメシリーズ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』あたりからではないかと思われる。全編がCGでありながら、手描きアニメのような美少女キャラが動く映像はちょっとした衝撃であった。 というのも、日本のアニメを象徴する記号の1つに「アニメ画の美少女」があるが、かつてはこのアニメ美少女をCGで表現することは難しいと思われていた。CGではどうしても“アニメ美少女”という記号を表現している2Dのウソを再現することが難しかったからだ。 だが、その困難に挑んだクリエイターは多く、ゲーム分野では早くからこの課題に取り組まれていた。それが、アニメにおいては『蒼き鋼のアルペジオ』の登場あたりで2Dと比べても遜色のない美少女の表現が可能となったことが証明されたのだ。
これは「CGでアニメ画のカワイイ女の子が描けるようになった」ということだけではなく、「CGで手描き風アニメを再現することに近づけた」という技術の進歩をあらわしたことそのものでもある。
しかしそれはゴールではなく始まりだった。デジタル技術のほとんどがそうであるように、このセルルックCGも日進月歩で、絶えず進化し続けている。 これまで30分作品は毎シーズンに1作ほどの作品数であったが、話題作の中にこのセルルックCG作品が数作ひしめいている今期は、模索の時期が終わったのではないかと感じられる。
今期のいくつかの作品を紹介したい。