Mar 26, 2017 column

映画『ひるね姫』“モノづくり寓話”に隠された神山監督のメッセージとは?

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新作アニメ映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』が公開された。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『精霊の守り人』『東のエデン』『009 RE:CYBORG』など、多くの話題作・人気作を手がけてきた神山健治監督の新作である。

舞台は2020年東京オリンピックが開催される3日前。倉敷で父と暮らす高校生・ココネは暇さえあれば昼寝をし、そのたびに現実離れをしたSFチックな夢を見ている。そんな彼女が父に降りかかった事件に巻き込まれる…というのが大まかなストーリーだ。

映画は、ココネの現実と夢が交互に交差していく形で進んでいく。現実ではタブレットを巡る、巨大自動車メーカーの騒動に巻き込まれる。ココネが見る夢では、優れた工業生産大国が舞台。もはや“魔法”の域に達しているとてつもなく進んだ科学技術のあるその国に、“鬼”と呼ばれる怪獣(?)が現れ、巨大ロボットで立ち向かう騒動が描かれる。 正直に書くと、予告編から想像していたものとかなり違う作品であることに戸惑い、「これまでの神山作品と大きく違うなぁ」とも感じた。

神山監督作品の特徴として、監督自身が生きている社会をどう見ているのか?が強く反映される。ネット社会をどう見ているのか、テロがある世界をどう見ているのかなどだ。それは作品の仕掛けでもありテーマの1つでもあった。

今回の『ひるね姫』が視点を向けている社会は2つある。

1つは、身近な半径1mほどの、自分が生活している日常という社会への視点。 監督が子供や仕事といった目の前の日常をどう見ているのか?だ。この映画は子供への寝物語を企画の入口としたそうだが、作中でも寝物語というキーワードは意味を持っている。子供への寝物語のフォーマットであるため、表面的な物語はシンプルだ。

そしてもう1つは、その表面の物語の下に流れている「社会とモノ作り」に対する視点だ。 それは工業や製造業に限らず、監督が生業としている映像産業なども含む、あらゆるモノ作りへの考え方である。もちろん技術者なども含まれる。