Mar 31, 2018 column

西野カナが歌うリアルな女の子と、映画『となりの怪物くん』との驚くべき親和性を解説

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人気コミックを菅田将暉と土屋太鳳のW主演で実写化した映画『となりの怪物くん』が4月27日(金)に公開される。今作で主題歌「アイラブユー」を書き下ろし、挿入歌としてこれまで発表した数々の楽曲が使用されているのが、西野カナだ。彼女の楽曲が、春(菅田)と雫(土屋)の不器用な恋愛と友情、家族の物語に優しく寄り添い、驚くほどにストーリーにリンクしている。今作との親和性、そして西野カナの曲が愛され続ける理由を紐解いていきたい。

 

ふと聴き覚えがあるメロディが耳に入ってきた瞬間、脳裏に広がる“あの”風景。思わず過去に引き戻され、胸を締め付けられる感覚や、すごく温かい記憶に頬が緩んだり、何年経っていようとも、思い出すたびに恥ずかしくなり、背筋を正したり…。誰もが、大切な音楽とともに寄り添う、大切な思い出があるはずだ。

今やドーム公演も果たし、アジアの歌姫として愛され続けているアーティスト、西野カナ。彼女ほど、そんな記憶の端をつつき、アルバムのページをめくるように鮮やかに、そして鮮明に記憶を刺激するアーティストは少ない。それは、彼女が選ぶ言葉がとてもリアルで、日常的で、誰もが“自分の歌”としてその歌を身体中に取り込むからだろう。だからこそ、彼女のこれまでの曲が映画『となりの怪物くん』に挿入歌として使用されることは、驚きよりも、納得の方が多い。なぜなら、まるで“日記”のような彼女の曲たちは、長い原作の物語を点描する映画の繋ぎ役、言ってしまえばストーリーテラーとして存在することが容易に想像できたのだ。

 

 

彼女が発表してきたこれまでの曲は150曲以上。そのほとんどの曲の主人公が、“西野カナと同世代のリアルな女の子”。大学生の頃にデビューし、現在30才を目前にした彼女がその時その時に抱いてきた恋愛観や、恋愛に関する心情の機微、女同士の友情、仕事や夢に向かって前を向きながらがんばる人に贈る応援歌を本人が描いているからこそ、そのどれもが20代、30代を生き、そして過去にその想いを経験したすべての人が“自分の歌”として聴くことができるのだ。現在の彼女の歌に、ウエディングソングや、結婚と恋愛、自分自身の夢を叶えるために葛藤する曲が多いのも、アラサーの女性だからこそだろう。そんな“日記”のような楽曲だからこそ、純粋すぎるがゆえにぶつかり、絆を深めていく人間同士の繋がりを描いた『となりの怪物くん』のような青春恋愛映画に、ハマらないわけがない。

 

 

映画が始まった瞬間、流れてくるのが「Best Friend」。登場人物みんなそれぞれ “独り”で“孤独”だったのが、まるでこの曲のように親友になっていく伏線とも感じ取れるように使われている。誰もが知っている大ヒット曲が、みんなの“たまり場”となる場所のラジオから流れているという演出で、この時代感をすぐに多くの人たちが察知できるのも、西野カナがビックアーティストだからこそ成しえる技だろう。