Jul 27, 2023 column

27年間続く「M:I」シリーズを3分で解説 !!  最新作『ミッション:インポッシブル/デッド・レコニング PART ONE』が公開中

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フェイクが混在する時代における本物

コロナ禍、世界的なインフレの中、報酬アップは真っ当な要求だが、俳優たちが最も懸念しているのは、AIに関するもの。近年、生成AIの飛躍的な進歩によって、俳優そっくりな動き、声を再現することが可能になっている。極端な話、AIを使えば、派手なアクションを盛り込んだオールスター映画も製作できる。『デッド・レコニング PART ONE』のような作品も理論上は作れる。そうなれば、俳優たちは失業だ。

最近、ある友人から、SNSに投稿されたというトム・クルーズ本人と、そのスタンドインたちとされる画像を見せてもらった。スタンドインたちは3、4人いたと思うが、全員顔がクルーズそっくり。今は整形も特殊メイクも進歩している。一瞬、本物かと思ったが、AIによる合成だったのだろう。真偽は分からないが、本物とフェイクが混在する時代になったのは確かだ。

『デッド・レコニング PART ONE』は、そんな中で、本物が究極にチャレンジしたアクション映画だ。予告編やテレビCMでは、断崖絶壁をモトクロスバイクで駆け上ってのダイブ、落下する蒸気機関車でのアクションを惜しげもなく見せているが、数ある中でも目玉シーンといえる。それでも、十分楽しめるのは、CGではなく、クルーズ本人が演じているからだ。アクションシーンで見せるためらい、恐怖といった表情は演技ではなく、本物なのだ。

プロダクションノートによれば、バイクで崖を落下するシーンは2020年9月の主要撮影の初日にノルウェーのヘルセツコペン山で撮影。約1200m下の渓谷に落下し、高さ152m地点でパラシュートを開くというもの。撮影にあたっては約1年前から練習・準備を行い、500回以上のスカイダイビングと1万3000回以上のバイクジャンプをこなし、本番では7回ジャンプを繰り返しているという。

蒸気機関車のシーンも、実際に撮影用の列車を一から作り上げ、オリエント急行のように細部を装飾。実際にノルウェーの鉄道路線を走らせ、橋を爆破し、最後は列車を崖底に落下させている。

クルーズは長年、自身がアクションシーンを演じることにこだわってきた。2022年、カンヌで「なぜ自分でスタントをすることにこだわるのか」と質問された時はこう答えている。

「ジーン・ケリーに、なぜ自分でダンスをするのかと聞いた人はいないですよね」

 クルーズにとって、アクションは息をするようなもの。やるのは当然というわけだ。