Netflixだからこそ傑作に?2時間超えの作品
スカーレット・ヨハンソンも、アダム・ドライバーも、おそらく『マリッジ・ストーリー』でいくつかの賞を受賞、あるいはノミネートとなる可能性は高い。さらに演技といえば周囲のキャストも絶品で、とくに主人公たちの弁護士を演じる、ローラ・ダーン、レイ・リオッタ、アラン・アルダが、持ち前の個性を最大限に発揮。アメリカにおける離婚裁判、とくにロサンゼルスでの魑魅魍魎ともいえる極端なパターンを表現し、この部分もじつに興味深い…というか、「本当にアメリカの離婚って大変そう!」と身につまされる。こうした離婚におけるゴタゴタに加え、ニューヨークのブロードウェイ事情、ロサンゼルスの映画やTVの世界と、ショービジネスの舞台裏が垣間見えるところ、さらに軽やかな笑いの要素も『マリッジ・ストーリー』の魅力になっている。
この『マリッジ・ストーリー』、もしかしたらNetflixゆえに傑作になったのかもしれない。上映時間は2時間16分で、物語を考えるとやや長い。ラブストーリーで2時間を超えるとなると、ほかのスタジオの製作だったら、この長さを削られていた可能性も考えられる。しかし、主人公二人の心情にじっくりと寄り添い、その葛藤に同調してしまう意味で、本作の2時間16分は的確。ラストの深い余韻も、この長さあってのこと。一方で、Netflixで、つまりストリーミング(配信)の環境で観るとなると、“一時停止”や“残りは別の日に”などの選択肢もできてしまう。そうなった時、作品の魅力である“時間”の感覚は失われる。
ノア・バームバック監督は、前作『マイヤーウィッツ家の人々』でNetflixとの信頼関係を結び、この『マリッジ・ストーリー』を完成させることができた。Netflixだからこそ、できあがった作品を、皮肉だが、劇場で観るように、ぜひ一気に通しで観ることで、その真髄を味わってほしいと思う。
文/斉藤博昭
女優のニコール(スカーレット・ヨハンソン)とその夫で監督兼脚本家のチャーリー(アダム・ドライバー)の、結婚生活への葛藤と離婚に向けた心情を描くヒューマンドラマ。うまくいかずにすれ違う二人は円満な協議離婚を望んでいたが、これまで閉じ込めてきた互いに対する積年の憤りが露わになって衝突、離婚弁護士を雇って争うことになる。“負けず嫌い”という共通点を持つ二人がそれぞれの弁護士と離婚の話を進めていくうちに、次第に事態はややこしくなっていき、ニコールは「自分じゃなく彼のために生きてた」と隠れていた本当の気持ちに気付いていく。はたして、すれ違ってしまった二人が選ぶ結論とは――?
監督・脚本:ノア・バームバック
出演:スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー、ローラ・ダーン
独占配信中
公式サイト:https://www.netflix.com/MarriageStory