Aug 06, 2019 column

名作『ライオン・キング』の“超実写版”で見せたディズニーの本気

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『ライオン・キング』が身近でありつづけた理由

オリジナル版『ライオン・キング』がいくらヒットしたとはいえ、公開から25年が経っている。その間、3D版の上映やDVDの普及などで多くの人が鑑賞できたということもあるだろうが、それは他の作品でも同じことだろう。それでもこの『ライオン・キング』が特別であり続けているのは、ブロードウェイ、日本では劇団四季によるミュージカル版の存在が非常に大きい。1997年にブロードウェイで始まったミュージカル『ライオン・キング』は、トニー賞受賞はもちろんのこと、現在に至るまで世界中で上演され続けている傑作ミュージカルだ。2014年には、世界各国での上演による累計興行収入が62億ドルを超え、映画などを含むすべてのエンターテイメントの中で史上最高の数字を記録。『ライオン・キング』は、まさに世界最高のエンターテイメントコンテンツとなったわけだ。そしてここ日本でも、1998年から劇団四季による公演が行われ、2015年には上映回数10,000回を突破。前人未到のロングランミューカルとして、すっかり日本人の中に定着している。オリジナル版の公開から25年、『ライオン・キング』というコンテンツは常に我々の身近にあったのだ。

実写化不可能な『ライオン・キング』の“超実写版”

そして、今回の『ライオン・キング』についてである。立て続けに実写リメイクを成功させたディズニーだが、本作については、全編最先端のCG技術を駆使して描かれる作品であるため、実写化ではない。というよりも、出来ないと言った方が正確だろう。物語としても、人間が一切登場しない作品であるがゆえに、猫や犬ならまだしも、サバンナの動物を使ってこの作品を実写で撮影することは現実的に不可能だ。だからこそ最高峰のCG技術で描くことは必然でもある。

監督は、『アイアンマン』シリーズをはじめ、役者としても活躍するジョン・ファヴロー。2016年に公開され、動物に育てられた少年の成長を描いた『ジャングル・ブック』でも監督を務めており、実写の少年とCGによる超絶リアルな動物たちを完璧に溶け込ませてみせた。そして、当時同作を観て思ったのは、動物だけの映画である『ライオン・キング』のリメイクを先にやるべきだったのではないかということだ。ここまで動物をリアルに描けるのであれば、人間と共演させた『ジャングル・ブック』を先に観てしまうと、動物だけの『ライオン・キング』が二番煎じ以下に見えてしまう。しかし監督のファヴローは、世界一のエンターテイメントコンテンツ『ライオン・キング』を蘇らせることに対し、驚くべきアプローチを試みた。