Dec 29, 2019 column

令和元年の日本映画をプレイバック!もっと評価されるべきは『宮本から君へ』

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『宮本から君へ』(公開中) ©2019「宮本から君へ」製作委員会

年末年始は観逃した映画を自宅でゆっくりとDVDか動画配信で鑑賞したい、もしくは久々に映画館に足を運んでみたいと考えている人も多いはず。2019年の日本映画シーンを賑わせたメジャー系の大ヒット作からヒットチャートには反映されなかった話題作までを回顧。さらに2020年の注目作も先取り紹介。観逃していた作品をぜひチェックしてほしい。

ファンが受け入れた人気コミックの実写化

令和元年となった2019年は、新海誠監督の長編アニメーション『天気の子』が興収140億円超えのメガヒットを記録、洋画もディズニー映画『アラジン』『トイ・ストーリー4』が100億円を超える好調ぶりで、日本映画界全体の年間興収は過去最高になることが見込まれている。邦画の実写作品では、アクション大作『キングダム』が57億円でトップ。東野圭吾のミステリー小説が原作の『マスカレード・ホテル』が46億円、コメディ映画『翔んで埼玉』が37億円、三谷幸喜監督のオリジナル作『記憶にございません!』が33億円、人気TVドラマの劇場版『コンフィデンスマンJP ロマンス編』が29億円、と興収ランキングの上位に入っている。

『キングダム』(ブルーレイ&DVD 発売中) ©原泰久/集英社 ©2019 映画「キングダム」製作委員会

邦画実写部門の第1位となった『キングダム』は累計発行部数4500万部という大ベストセラーコミックをベースに、『GANTZ』(11年)や『アイアムアヒーロー』(16年)など実写とCGとの融合を得意とする佐藤信介監督が原作の世界観を壊すことなく、手堅くまとめ上げた。下僕の身分から大将軍を目指す主人公・信を演じた山賢人がクライマックスで叫ぶ「夢を見て何が悪い? 夢があるから立ち上がれるんだろうが」という台詞が、若い世代の胸に刺さったようだ。のちの始皇帝となる嬴政と孤児役の漂の二役を演じ分けた吉沢亮も、若手演技派としての評価を高めた。

予想外のヒットとなったのが、魔夜峰央原作コミックのまさかの映画化『翔んで埼玉』。「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」と埼玉県民を徹底的におちょくった内容だったが、GACKTが高校生、さらに二階堂ふみが男子高校生役とリアリティのまるでない配役が功を奏し、ナンセンスなギャグ映画として受け入れられた。1982~83年に発表された原作コミックは未完のままだが、映画版では虐げられてきた埼玉県民が差別を助長する中央政府に対して決起することになる。二階堂とGACKTはともに沖縄出身だけに、最後の一斉蜂起シーンは沖縄の基地問題を個人的には連想させたが…。

2019年、スクリーンで輝いた女優

長澤まさみのスクリーンでの活躍が目立った1年にもなった。ここ数年は年間3本ペースで映画出演していたが、2019年は出演作がどれも大ヒット。『キングダム』では山の民を率いる女王役を凛々しく演じ、本格的なアクションは初挑戦ながらダイナミックな二刀流を披露した。木村拓哉と共演した『マスカレード・ホテル』では利用客へのサービスを第一に考える優秀なフロントクラーク、『コンフィデンスマンJP ロマンス編』では天才詐欺師と、いくつもの異なる顔を見せている。大人の女優としての充実期を迎えたようだ。

小松菜奈も、異色時代劇『サムライマラソン』では男装のお姫さま、音楽ロードムービー『さよならくちびる』ではインディーズ系アーティスト、『閉鎖病棟 ―それぞれの朝―』ではDVで苦しむ女子高生と、多彩な役を演じた。一作ごとに成長する、目が離せない女優となっている。

ミニシアター系でスマッシュヒットとなったのが、岸井ゆきの主演作『愛がなんだ』。角田光代の同名小説を原作に、『退屈な日々にさようならを』(17年)などオリジナル作品で高い評価を受けてきた“恋愛映画の旗手”今泉力哉監督が、岸井、成田凌らブレイク中の若手キャストたちとがっつり組んだ快作となった。恋心とはビミョーに異なる、惚れた相手に嫌われたくない、なれるものなら相手そのものになってみたいという、言語化されていない不思議な感情が描かれている。

『愛がなんだ』(Blu-ray・DVD 発売中) ©2019映画「愛がなんだ」製作委員会

コロコロと変わる岸井の表情の豊かさと、その表情を巧みに引き出してみせた成田の助演ぶりがお見事。成田は『さよならくちびる』や現在公開中の主演作『カツベン!』でも役になりきっている。今泉監督は新作『mellow』と『his』の公開が年明けの1月17日(金)と1月24日(金)に控えており、2020年も注目したい。