May 20, 2026 column

グローグーの成長を見届けたい 映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン&グローグー』 (vol.88)

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たくさんのお宝が隠された映画

映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』はドラマシリーズを見ていなくても単独で成立しているが、スター・ウォーズ・ファンにとっては、過去作の小さな目配せがあちらこちらに見え隠れしていて、たくさんのお宝が隠されている。それはドラマシリーズのクリエーター集団がいかにスター・ウォーズを観て映画監督になりたいと思ったかが反映されている証。彼らの遊び心は、ルーカスのビジョンを忠実に受け継いでいる。

その筆頭であるジョン・ファヴロー監督は、ディズニープラスのドキュメンタリーシリーズ「ディズニー・ギャラリー/ スター・ウォーズ:マンダロリアン シーズン1」でドラマシリーズにかかわった監督たちとの座談から、おもしろい裏話を聞き出している。何が彼らをクリエイターに導いたのか。それぞれの経歴は違っても、スター・ウォーズに魅了されて、今の自分があるという監督たち。ジョン・ファヴロー監督と同じく、ジョージ・ルーカスから、おそらく最も高い信頼を得ているデイヴ・フィローニ監督の話は格別。

彼の経歴はおもしろい。映画『スター・ウォーズ/シスの復讐 (エピソード3) 』(2005) 公開時に開催された「スター・ウォーズ・コンベンション」で、ジョージ・ルーカスが、次回作は『エピソード3 (シスの復讐)』と『エピソード4 (新たなる希望)』の間の物語を描いた実写ドラマシリーズ企画『Star Wars:Underworld(原題)』を制作することを発表。しかし、大人向けの内容であることや、実写テレビドラマシリーズであることで莫大な制作費が予想されるなどの問題が発生し、企画は保留され実現しなかった。しかしその内容が、さまざまな経過を得て3DCGアニメのテレビシリーズとして再浮上した。当時、ケーブルTVのニコロデオンで放映し、大ヒットした「アバター  伝説の少年アン」の第一シーズンのエピソードを監督したフィローニが、2008年に『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』という『スター・ウォーズ』初の3DCGアニメ映画の監督に抜擢された。そのあと、同作のTVシリーズ (シーズン1からシーズン7) の制作総指揮として、長期で奥行のあるスター・ウォーズの世界観を作り出してきた彼の偉業はすごい。私は全て見れていないが、中には1シーズンに22エピソードもあるほどの壮大な内容で、あらゆる銀河系,大小さまざまなキャラクターやそれぞれの言語が飛び交う、ある意味、スター・ウォーズの辞書のようなボリューム。

当初、キャラクターのデザインやビデオゲームのような戦いのシーンが一般受けしなかった3DCGアニメシリーズにも見えたが、その一つ一つの銀河系を追いかけていた『スター・ウォーズ』ファンは大勢いる。映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』の中には3Dアニメシリーズ『スター・ウォーズ 反乱者たち』の主要キャラクターがサプライズ登場しているシーンもある。この部分はネタバレになってしまうが、帝国(インペリアル) の圧政に反抗する仲間が乗り組む宇宙船(ゴースト)の乗組員の中にいるレジスタンスの戦士ゼブが新映画で登場すると、私が参加した試写会場では歓声が上がるなど、過去作のなつかしいキャラクターを思い出させるシーンに、感嘆や拍手があがっていたのも、この映画が成功している証拠ではないだろうか。

だいぶ古い記事だが、SciFiNowの2011年のTVシリーズ「クローン・ウォーズ」シーズン3のインタビューを読むと、デイヴ・フィローニとジョージ・ルーカスが2人で同時にインタビューに答えている。ジョージ・ルーカスは「スター・ウォーズのユニバースは、宇宙とフォースという、特別なエネルギーの神秘的な要素が物語の一面になっているが、アニメシリーズを見れば、映画はスター・ウォーズ・ユニバースの氷山の一角であることがわかるはずだ。」と答えている。

フィローニ監督は「クローン・ウォーズ」について、「『スター・ウォーズ』シリーズで作られた全登場人物にフルアクセスできるのはとても楽しい。オビ=ワンの言葉を借りれば、「私たちがしがみついている真実の多くは、自分自身のものの見方に大きく左右される」――“Many of the truths we cling to depend greatly on our own point of view.” ということだ。だから、これまで伝えてきた視点から遠のき、今まで語ってきたシリーズ、そして、映画の物語をあらゆる角度で広げ、ファンが愛したキャラクターに再度、焦点を写し、彼らのこれまで語られなかった背景や生い立ちがいかにクローン・ウォーズと繋がっているかを深くほりさげると、スター・ウォーズの物語は底なしだということがより一層、明らかになったね。」と楽しそうだった。

「クローン・ウォーズ」を経て、「スター・ウォーズ 反乱者たち」が2014年に放送開始。そのアニメ総監督として原案に携わったデイヴ・フィローニが、「マンダロリアン」シリーズを成功させる上で、重要な人物となっていたことは明らか。ルーカスは、アニメーション作品でフィローニを見出したが、ルーカスの創造したユニバースを次世代に受け継いでいけるリーダー的存在であることを見抜き、まるで自らのパダワンかのように育てたのかもしれない。2026年1月に発表されたように、ルーカスフィルムのクリエイティブの代表 (チーフ・クリエイティブ・オフィサー) となったデイヴ・フィローニ。今後の『スター・ウォーズ』の世界観を指揮していくプレッシャーは計り知れない。しかし、彼が導いたフランチャイズの成功は、『スター・ウォーズ』の世界観を楽しんでいたからかもしれない。「マンダロリアン」の新共和国のパイロットTrapper Wolf役で劇中に登場したり、ドラマシリーズ「アソーカ」ではチョッパーというあだ名を持つC1-10Pの声も演じるほか、遊びのある演出ができるマルチ・タレントでもある。『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け (エピソード9) 』(2019) 以来の新しい『スター・ウォーズ』映画を、楽しい家族映画として復活させたフィローニ率いるチームに今後も期待したい。

文 / 宮国訪香子

作品情報
映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』

帝国が崩壊し、銀河は無法地帯と化していた。 どんな仕事も完璧に遂行する“孤高の賞金稼ぎ”マンダロリアン。そしてフォースの力を秘めたグローグー。 長く果てしない旅を続ける中で、固い絆に結ばれた二人を待ち受ける、壮大な冒険と驚くべき運命とは?

監督:ジョン・ファブロー

出演:ペドロ・パスカル、シガーニー・ウィーバー

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

©2026 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.

2026年5月22日(金) 日米同時公開

公式サイト mandalorian-grogu

宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。