クリティクス・チョイス・アワード(放送映画批評家協会賞)が先週末の3月13日(現地時間)にロサンゼルス、フェアモント センチュリー プラザで行われた。1月に予定していた授賞式がオミクロン株で延期となり、コロナ対策を万全にして決行。英国アカデミー賞と同日に開催されたため、ロンドンからも深夜中継でスターが参加するという異例の祭典となった。
1996年に放送映画批評家協会賞としてアメリカ、カナダ在住の映画批評家の間ではじまったこの賞は、2019年に映画批評家と放送テレビジャーナリストを合わせてメンバーの規模を拡大、クリティクス・チョイス・アワードと賞の名前も英語では改められている。現在はインターナショナル部門のジャーナリストも加わり、構成メンバーは約500名。アカデミー賞前哨戦の中でもとくに多様性を重視していて、毎年秋にはドキュメンタリー賞、ブラックシネマ&テレビジョン賞。さらにはラテン系のクリエイターに注目したラティノ・シネマ、外国語映画を中心とするワールド・シネマ、特撮ファンタジーなど人気映画やTVシリーズを称えるスーパー・アワード、リアティTV賞なども予定していて、意欲的な批評家団体である。
今年の映画部門では『パワー・オブ・ザ・ドッグ』と『ベルファスト』が4部門受賞、配信ドラマシリーズでは「イカゲーム」が外国語ドラマシリーズ作品賞受賞、そして主演のイ・ジョンジェがドラマ作品シリーズの主演男優賞にも受賞するという快挙を成し遂げた。今年は、外国語映画賞を受賞した濱口竜介監督作品『ドライブ・マイ・カー』とともに、アジア系メディア関係者の活躍が目立った授賞式となった。
映画と海外ドラマの両メディアで活躍するマルチタレントたち
映画とテレビと大きく枝分かれしていた約10年前に比べ、配信時代の海外ドラマにも多くの映画関係者が関わっている。俳優たちが勢揃いした華やかな会場では、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』から『tick, tick…BOOM! チック、チック…ブーン!』と引っ張りだこのアンドリュー・ガーフィールドが海外ドラマ「コブラ会」シリーズ(映画『ベスト・キッド』スピンオフ)の大先輩ラルフ・マッチオと2ショットで並ぶなど、世代を超えて称え合う光景が多々見られた。
海外ドラマの作品賞は全米で大人気の「メディア王~華麗なる一族~」が受賞。この賞のクリエイターはアカデミー賞の監督及び作品賞でもノミネートされている映画『ドント・ルック・アップ』の監督アダム・マッケイ。もともとはTV「サタデー・ナイト・フィーバー」のライター兼ディレクターでもあった監督で、プロデュースする作品はコメディも含め幅広い。「メディア王」では実在するFOXニュースのルパート・マードック一族が企画のインスピレーションにあると本人も認めている。映画『バイス』など、鋭い視点で米社会構造の歪みを切りとり、エンターテイメント性溢れる映画や海外ドラマを作り上げる監督の手腕は見事である。
ドラマ作品シリーズで助演男優賞を受賞したのがキーラン・カルキン。兄マコーレーとともに子役映画スターとして活躍していたが、この「メディア王~華麗なる一族~」では傲慢な父に振り回される三男役を演じていて、個性的で目が離せない。コメディ作品シリーズの主演女優賞を惜しくものがした「The Great ~エカチェリーナの時々真実の物語~」のエル・ファニング。キーラン同様、子役スターとして『アイ・アム・サム』などで姉ダコタ・ファニングの幼いときを演じるなど、デビューから年月を経て、魅力的な役者に成長。存在感のあるオスカー・デ・ラ・レンタのドレスで堂々とレッドカーペットに登場し、人気シリーズを引っ張っていく主演女優の顔になっていた。