Mar 19, 2022 column

第7回:第27回クリティクス・チョイス・アワード(放送映画批評家協会賞)の人種、世代を超えたマルチタレントたち

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受賞者から連呼されたロシア軍事侵攻に対する抗議

功労賞を受賞したのが、74歳になったばかりのビリー・クリスタル。俳優としても、アカデミー賞のホストとしても長年人気が高く、現在はNYブロードウェイで3月29日から始まるミュージカル「ミスター・サタデー・ナイト」の準備中だそうだ。スピーチの中で、「私の最初の観客は家族。オデッサとキエフから移民した祖母とその家族の笑いが、今の私を築き、私の俳優活動の燃料になっています。」とウクライナにゆかりがあることにふれ、難民となったウクライナ国民の身の安否を心配するスピーチに対し、観客から惜しみない拍手が送られた。

ライフタイムアチーブメント(功労賞)受賞 / ビリー・クリスタル
Photo by Randy Shropshire/Getty Images for Critics Choice Association

日本のディズニープラスで配信されている実話ドラマ「DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機」で主演男優賞を受賞したマイケル・キートンは、米製薬会社が鎮痛剤の危険性の周知を怠ったことで犠牲になった人たちのことを振り返り、「被害者とその家族の尊厳は作品の中で保てたのではないかと思う」とドラマ制作を振り返って受賞の喜びを噛みしめていた。

さらには「ロシアのウクライナ侵攻で戦っているフェロー・アクター(我々の同志と、大統領が元俳優であったことを示唆)、ゼレンスキー大統領になんとかがんばってほしいと激励し、最も大事なのはVoting Rights、すなわち、国民が投票する権利であると断言。アメリカで問題になっている投票券保護法案の重要性にふれ、ロシアの国に起こっていること、すなわち、間違ったリーダーを選んだロシアの現状はどこの国でも起こりうることだと示唆した。マイケル・キートンは歴代バットマンを演じた俳優でもあり、正義に満ちたスーパーヒーローを思い起こさせる一俳優の姿勢は多くの観客からも賛同され、人権、そして表現の自由と平和を考えさせられる一夜となった。

マイケル・キートン
Photo by Amy Sussman/Getty Images for Critics Choice Association
『ドリームプラン』チーム&シー・ハー・アワード(特別賞)受賞 / ハル・ベリー
Photo by Alberto E. Rodriguez/Getty Images for Critics Choice Association

文 / 宮国訪香子