May 29, 2025 column

マッスルカーが駆け巡る 2025夏のドラマ&映画 :J・J・エイブラムスの「DUSTER / ダスター」とブラッド・ピット主演映画『F1/エフワン』 (vol.67)

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モナコでお披露目!ブラッド・ピット主演期待作『F1/エフワン』

世の中がカンヌ映画祭の話題で盛り上がっているなかで、密かに!?フォーミュラ1のプロ・レイシング・ドライバーの間でテスト試写されたのが、6月末全世界公開予定の『F1/エフワン』。プロデューサー・監督チームは、『トップガン マーヴェリック』が世界的大ヒットを収めたジェリー・ブラッカイマーとジョセフ・コシンスキー監督。この超大作映画の仕込みはとてつもなく、物語、カーチェイス、撮影の一部始終が超高速”体感”映画として、映画館に観客を呼び戻すことは間違いない。

物語の主人公、ソニー (ブラッド・ピット) は、旬をすぎた元トップ・ドライバー。1990年代のF1レースで、右にでるドライバーはいないほどに将来を約束されていたソニーは、不慮の事故でキャリアを断念。その30年後、あるチームのオーナー(ハビエル・バルデム) から、トップ・レーサーとしてカムバックしないかと誘われる。しかし、チームはその決断に疑問。F1はチームプレイが必須。1匹狼のサニーが、マシンを開発するチームを率いてトップへの道を切り開けるのか、手に汗握る感動がこの夏やってくる。

フォーミュラ1は、自動車レースの最高峰。ヨーロッパを中心にしたモーター・スポーツの人気は2024の年間の観客動員数が約6億人を超えたというほど大人気。先行試写が行われたモナコの会場には、映画のプロデューサーとして名を連ねる現役のF1ドライバー、ルイス・ハミルトン他大勢が参加した。ハミルトンは、2007年からマクラーレン、メルセデス、現在はフェラーリの所属チームで活動し、105回の優勝経験を持つベテラン。彼のインプットは、F1ドライバーとなるためのドライビングスキル、ベテランレーサーが熟知する精神的試練などを伝授。ある撮影では、リアリティを追求するために、予算も増大するなど、本物のサーキットを舞台に、徹底した調整が必要だったそうだ。

また米国では、公開からほぼ1ヶ月前でほとんど通常の映画宣伝がないように見受けられるのは、前作『トップガン マーヴェリック』の記録破りがあるからなのか。トム・クルーズ演じるマーヴェリックが、エリートファイターで、NASCARドライバーであったように、ジェリー・ブラッカイマーは『トップガン マーヴェリック』を製作中に、F1ドライバーの映画を作ることを構想していたそうだ。「ファイター・パイロットもレースドライバーも、彼らは常に境 (生と死の境)にいる。それは私たちが最も愛するテーマで、望むのは主人公たちが、その境の先にある崖っぷちに堕ちないこと。彼らのとんでもない勇気と技が我々を魅了するんだよ。」とF1-15のインタビューでコメントしている。

さらに、車輌につけられた4体のIMAX認証デジタルカメラは、『トップガン マーヴェリック』で使用したものよりも小さく、自動に動いてターンまで可能になるほどハイテクな最新撮影技術を起用。持続300km超えの命懸けのスピードの頂点はきっと、コックピットを操作するような臨場感でいっぱい。スタントをこなすために訓練した熟年トップ・スターのブラッド・ピットが、本物のサーキットでマシンを操縦するレーサーぶりがあらゆる角度から捉えられる。

コシンスキー監督の実力は、『トップガン マーヴェリック』の大ヒットで明らかだが、彼が魅了された映画のテーマは、F1がチームスポーツであること。技術者がドライバーと一体となってマシンをデザインし、レースに命を賭ける様子には人間ドラマがある。ライバルとなる若きルーキー役に、カリスマ溢れる黒人俳優ダムソン・イドリス。ヒロインであり、マシン開発担当でピットクルーのリーダーに女優ケリー・コンドン。

夏のオリジナル大作のハートの部分、主人公の自らを超えるレースに期待したい。

文 / 宮国訪香子

作品情報
MBO MAX「DUSTER / ダスター」

舞台は1972年、混沌と暴力が支配するアメリカ南西部にFBIが極秘任務として送り込んだのは、差別や組織内部の妨害とも闘いながら、正義を胸に任務を遂行する女性捜査官ニーナ。そんな彼女が運転手として選んだのは、過去に多くを失い、孤独に生きるアウトロー・ジム。ニーナと共に命を懸けた逃走劇に身を投じながら、2人は次第に巨大な陰謀と国家レベルの秘密へと足を踏み入れていく—。

製作総指揮:J・J・エイブラムス

ショーランナー、脚本家、製作総指揮:ラトーヤ・モーガン

出演::ジョシュ・ホロウェイ、レイチェル・ヒルソン ほか

U-NEXTにて独占配信中

作品サイト unext.jp/title/SID0188289 

作品情報
映画『F1/エフワン』

伝説的元カリスマF1レーサーのソニーは、最弱のF1チームを救う為、現役復帰を果たす。常識破りなソニーの振る舞いに、チームメイトである若きルーキーやチームメンバーは困惑し、度々衝突を繰り返すが、次第に圧倒的なソニーの才能と実力に導かれていく。果たしてソニーは、バラバラのチームと共に過酷な試練を乗り越え、並み居る強敵たちを相手に逆転できるのか。それぞれの情熱と誇りを胸に、命がけでスピードの頂点に挑む。

監督:ジョセフ・コシンスキー

出演:ブラッド・ピット、ダムソン・イドリス、ケリー・コンドン、ハビエル・バルデム

配給:ワーナー・ブラザース映画 

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2025年6月27日(金) 全国劇場公開

公式サイト f1-movie

宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。