第29回クリティクス・チョイス・アワード(放送映画批評家協会賞)が開催されたアメリカ、サンタモニカ。空港格納庫バーカー・ハンガーという大会場では、晴天の下、ブラック・タイのドレスコードで着飾ったスターがレッドカーペットに勢揃い。スタジオエグゼクティブ、宣伝関係者、そして批評家たちなど関係者がごった返し、去年のベスト映画、そしてTVシリーズの優秀作品を称える毎年恒例の大イベントとなった。
米興行トップ作品の中で光るインディペンデント映画の数々
映画部門では、いよいよアカデミー賞、特に監督賞受賞となるか期待のかかる『オッペンハイマー』のクリストファー・ノーラン監督がクリティクス・チョイスの監督賞を受賞。21世紀の映画界で彼ほどに映画界に貢献した人はいないが、アカデミー賞では監督としてノミネートされたのは映画 『ダンケルク』のみ。脚本では『メメント』『インセプション』、プロデューサーでは『インセプション』『ダンケルク』でノミネーションのみで、意外にもアカデミー賞は受賞していないのである。今年はクリストファー・ノーラン監督作品がオスカーを手にする可能性も十分に大きいのである。
しかし、競合する映画作品も負けてはいない。『オッペンハイマー』は助演男優ロバート・ダウニー・Jr. とアンサンブル演技賞を受賞したが、主役級は大きくはずした。個々の俳優賞はこのコラム40回の最後でも触れた映画『The Holdovers (原題)』が総なめ。主演男優ポール・ジアマッティ、主演助演女優ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、デビューしたばかりの若手に贈られる新人賞にドミニク・セッサと、3冠に輝いたこの映画は、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)ストライキ終了直後の11月中旬から年末にかけて、追いかけるように宣伝、口コミでその良さが浸透。映画『サイドウェイ』チームと、監督アレキサンダー・ペインの魔法が健在であるという嬉しいニュースが広がった。ここ数年、3時間以上という超大作が続き、娯楽度に欠けた作品も多かったハリウッド映画作品群。 久しぶりにもう1度見たいと思わせる小品『The Holdovers (原題)』は人間の孤独を描き、人との衝突から生まれた心温まるドラマで、日本でも早く公開してほしい映画である。
Photo by Emma McIntyre/Getty Images for Critics Choice Association