Jan 19, 2024 column

第42回:女優パワーが炸裂したクリティクス・チョイス・アワード 『哀れなるものたち』主演女優賞受賞のエマ・ストーンが、アカデミー賞前哨戦の順風に帆をあげた!

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女優兼プロデューサーという役どころで活躍した女優は配信シリーズでも多く、リミテッドシリーズで主演女優賞を受賞したNetflix「BEEF/ビーフ ~逆上~」のアリ・ウォン(このコラムでも紹介済)やドラマ・シリーズでノミネートされていた「ザ・ディプロマット」シリーズの女優ケリー・ラッセルなどの活躍も注目されている。

“Ali Wong” Photo by Kevin Winter/Getty Images for Critics Choice Association

『オッペンハイマー』と同カテゴリーで競ったヨルゴス・ランティモス監督の映画 『哀れなるものたち』。主演女優のエマ・ストーンは、『ラ・ラ・ランド』でも、すてきな女優だったが、今回は体当たり演技で、女優として大きく成長している。監督の前作『女王陛下のお気に入り』でアカデミー賞主演女優賞に輝いたオリヴィア・コールマンを覚えている人も多いと思うが、同映画で助演、女王に食らいつくおてんば娘役を演じていたのがエマ・ストーン。今回、プロデューサーとして監督ヨルゴス・ランティモス、脚本家トニー・マクナマラと再度タッグを組んだ映画『哀れなるものたち』は、映画全体がダリの絵画を動画にしたような奇妙なビジュアル。最初の白黒映像から色とりどりのメルヘンな世界観へ展開させる独特の創造性は見事。ランティモス監督の映画『哀れなるものたち』は 女性版フランケンシュタインの物語。原作はスコットランド人作家アラスター・グレイの異色小説「哀れなるものたち」。自殺した女性の体を天才医師が蘇生し、身ごもっていた子供の脳の移植で大人の赤子として生まれ変わる女性ベラの物語。ベラはピノキオとフランス人形を半分で割ったような美しい女性で、ぎこちない動きをするものの、美貌溢れるベラに魅了された男性たちの性欲の虜になっていく。

しかし、彼女が出会う男性は最低の男たちだらけ。ベラは自らの性に目覚めながらも、動物と人間、男と女とは、と自らの目で世の中を知るために、出会ったばかりの弁護士と旅にでる。ある意味、映画 『バービー』の人形像とどこか似ていて、自らが生まれた世界に違和感を持ち、その不平等さに心から痛みを感じるフェミニスト。自殺に追い込まれた、生まれ変わる前の自分の過去を検証。彼女を死に陥れた問題に自らメスを入れていくまでに行動するエマ・ ストーンの演技は目が離せない。どちらかというと、コメディよりホラーのような映像も多いため、映画館で缶詰にされて鑑賞することをお勧めする。人間の臓器がインスピレーションとなった衣装など、そのプロダクション・デザインの豪華さも圧巻である。