May 03, 2023 column

胸糞な暴力描写だけじゃない 唯一無二の復讐劇「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」

A A
SHARE

今年のゴールデンウィークは最大9連休と長めのお休み。otocotoでは4月29日から5月6日まで、選りすぐりの人気作・話題作を毎日紹介します。明日のことを考えず、夜更かしが許されるこの機会に話題となっている配信オリジナルの映画、ドラマシリーズを一気見してはいかが?

静かにゆっくりと枯らすような復讐劇

2022年12月30日にNetflixで独占配信が開始され、連日Netflix“今日のTV番組TOP10”入りする注目作「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」。韓国のゴールデングローブ賞と呼ばれる百想芸術大賞で9ノミネートされたドラマシリーズだ。待望のシーズン2が今年2023年3月10日に配信され、更なる盛り上がりを見せている。

本作は、高校時代に壮絶ないじめにあったムン・ドンウンが、17年の時を経て、自分を体を心をそして人生を壊した者たちへ復讐を繰り広げるサスペンスだ。

シーズン1の第1話は、目を背けたくなる暴力描写とともにドンウンの生い立ちが描かれる。

いじめを無視する担任教師、加害者の親から金を受け取り自主退学の書類に判を押した母親、彼女には頼れる味方がいない。高校時代の彼女は色もなく暗い影を落としており、スクールカースト上位のいじめ加害者たちはカラフルで光輝いているように見えており、この対比は、映像で色彩として表現されている。

いじめを受けたドンウンは、火傷の傷の熱を冷ますため、服を脱ぎ半裸で降り積もった雪の上に寝転がる。絶望の中、彼女は冬の寒空のなか自殺を試みるが未遂に終わる。そしてその後の人生を復讐に捧げることを決意する。

そして彼女は我々に問いかける。「目には目を、歯には歯を、傷には傷を持って償う。それはあまりにもフェアではなくはないか?」と。

それは「同情するなら金をくれ!」と同じように中途半端な哀れみはいらないと視聴者を制しているようだ。そのほかにも「笑うと目的を忘れる」などドンウンが無表情で放つ刺激的なセリフが刺さりまくる。

第2話以降、ムン・ドンウンは加害者たちをゆっくりじわじわと復讐を開始する。それも徹底的に。フェイスブックで知るいじめ加害者グループたちの現状。彼らはお天気キャスター、経営者、画家、CAになっており、どこかに闇を抱えながらも、いわゆるセレブリティのキラキラとした人生を送っている。そして、相変わらずの嫌な奴として登場する。彼らはドンウンと再会を果たしても過去の罪を反省するそぶりもない。

高卒認定を取得し大学入学、そして教師目指すドンウン。家庭教師のバイトするにも囲碁を勉強するにも彼女の行動すべてに意味があり、エピソードを重ねるとそれが復讐計画に繋がっていることにゾッとする。

静かで綿密に練り上げられた復讐計画は、次第に周りの人々を協力者として巻き込んでいく。が、協力者の誰も彼女の復讐を否定しようとしない。これは第72回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『パラサイト 半地下の家族』のように、このドラマに韓国格差社会へのアンチテーゼが盛り込まれているからだと思われる。

ドンウンが赴任した小学校で「教室では次の3つは力を持たない、親の仕事、財力と人脈。そして、次のルールを守ること、いい服、いい車、いい家を盾に友達をいじめないこと」と低学年の生徒に伝えたことも興味深い。

視聴者の多くは、登場人物の誰にも感情移入ができないだろう。復讐劇のラストを見届けたあなたは、復讐者、協力者、加害者の誰が「クソ野郎」だと思うのか。

シーズン1で未完だった復讐が、配信中のシーズン2でついに完結する。ムン・ドンウン役のソン・ヘギョ、協力者のイ・ドンヒョン、いじめ加害者のリーダー役のイム・ジヨンが、役柄へ徹底的に入り込んだ演技にも注目が集まる。今まさに一気見するには絶好の機会だといえる。

作品情報
Netflixシリーズ「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」(全16話)

学生時代にいじめを超えた非道な暴力を受けた主人公ムン・ドンウンが、数年の時を経て綿密な計画のもと練られた復讐劇を繰り広げていく、背筋が凍る衝撃サスペンス。

監督:アン・ギルホ

脚本:キム・ウンスク

出演:ソン・ヘギョ、イ・ドヒョン

Netflixにて世界独占配信中

視聴ページ netflix.com/title/81519223