Feb 10, 2024 column

映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』にみる原作の恐怖を回避する方法

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原作モノの成功と恐怖とは

原作知識のない者が違和感なく楽しめ、ファンが喜ぶ仕掛けをしている映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は、原作モノの成功例だと思う。本編を観れば、原作のバックグラウンドを理解し、映画としてのストーリーは、その世界観を広げているのがわかる。

もちろん、原作ゲームに、マイクの妹、警察官、キャリアプランナーといったキャラクターは登場しないし、プレイヤーである主人公もマスコットたちを攻撃することはない。しかし「ゲームでは扉を閉めて防御するしかできないのに、改悪だ!」とか「原作に忠実であるなら閉じ込められる恐怖を描くべきだった」などといった原作レイプ批判、過剰な原作リスペクト論は起きないだろうと思う。

それはもちろん、ゲーム開発者のスコット・カーソンが深く深く愛情を捧げ、脚本草案をはじめ映画製作に積極的に参加し長い時間をかけたことも、その要因のひとつ。

もうひとつは、ブラムハウスが映画化に向け、原作の世界観と映画として成立する物語を描くことの両方を諦めなかったことにあると思う。これを成立させるは簡単なことではない。

大人気コミックを映画化した『ゴールデンカムイ』(2024年1月19日公開)は、原作の再現度がすごいと話題だが、スタッフの熱量が高い原作愛、そして物語の根幹であるアイヌへのリスペクトがあったからこそだと思う。その思いが伝わってか、担当した久保茂昭監督は、撮影現場を訪れた原作者の野田サトル氏に「何があっても味方でいるよ」と声をかけられ涙したそうだ。

もちろん、原作は守られるべきだし尊重されるべきなのは大前提だ。人気原作ありの映像化作品の量産は、ある程度、集客が見込める点がその理由だが、その製作は原作再現を求められる厳しい戦いだとも思う。

マンガ原作でいえば、アニメ化するなら、描かれていないコマとコマの間、ページを捲る過程で起こったことを描写しなければならない。実写化するなら、マンガだから表現できるセリフと間、肉体の動きを実際に俳優が動いたときに出る違和感を全体から払拭しなければならない。

本作『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』でいえば、1夜目と2夜目の間を描かなければ、映画として分かりにくいし、ここのオリジナル解釈に原作との違和感があってはならないという非常に難しいことを求められているのだ。

誰もが担当分野で作品を成立させるための努力をしている。ゼロをイチにした原作の権利だけでなく、こういったクリエイティビティも無視されてはならないと思う。

リスペクトとは他者の立場を想像することに他ならない。平たく言うと思いやりだ。

つい批判めいたことを言いたくなる原作モノだが、原作VS二次創作といった二局構造で過剰なバッシングするのではなく、作品に携わった多くの人々のこと、彼らの立場を少し想像し思いやってほしいなと思う場面が昨今少ない。

ゲームを原作の映画といえば、アンジェリーナ・ジョリーの出世作『トゥームレイダー』(2001)がある。好評を博し続編、リブートされるが、「アンジーを見るだけの映画」とか「ゲームとはストーリーが全く違う」などと厳しい意見が多くみられた。それでもまたアニメ版『Tomb Raider: The Legend of Lara Croft(原題)』が、2024年にNetflixでデビューする。このように人気のコンテンツは時を経て何度も利用される。原作モノに潜む”高い再現力の強要”といった恐怖はすぐに拭うことはできない。一筋縄ではいかない問題なのだろう。

FNaF開発者で本作の製作にも名を連ねる、スコット・カーソンは言う。「ゲームを知らない人でも楽しめる映画にすることも重要だけど、実際、ファンのために作ったようなもんなんだ。映画化が実現したのも全てはファンのおかげだ。だからファンに満足してもらうことが最優先事項だったんだよ」

原作者も製作者もファンを深く思いやっている『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は続編製作が決定しているようだ。ゲーム「FNaF2」によれば、次は11体の機械人形のマスコットが襲いかかってくる。あの不気味な人形がさらに増えると考えると予算的にも恐ろしいが、期待せざるを得ない。

文 / 小倉靖史

作品情報
映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』

プロデューサーのジェイソン・ブラムを筆頭に『M3GAN/ミーガン』『ブラック・フォン』『透明人間』など数多くのヒット作を生み出し続ける製作会社ブラムハウスが、全世界で一大ブームを巻き起こしたホラーゲームを映画化。

監督:エマ・タミ

出演:ジョシュ・ハッチャーソン、エリザベス・レイル、パイパー・ルビオ、キャット・コナー・スターリング、メアリー・スチュアート・マスターソン、マシュー・リラード他

配給:東宝東和

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公式サイト fnaf-movie