Feb 10, 2024 column

映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』にみる原作の恐怖を回避する方法

A A
SHARE

人気ホラーゲーム「Five Nights at Freddy’s」(以下FNaF)を原作としたホラー映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』が2月9日に公開された。これまで数多く公開されてきた大人気ゲームの映画化とどこが違うのか。ゲーム原作映画、ひいては原作あり映像作品の歴史を振り返りながら、本作のシンプルでありながら綿密に練られたストーリーの魅力について紐解きたい。

ゲームを映画にする10年

FNaFは、2014年8月にリリースしたPC向けホラーゲームだ。プレイヤーは、午前0時から6時まで廃墟化したピザレストランで働く夜間警備員。仕事内容は監視カメラのチェック、備品や動物ロボットの安全確認をするだけの簡単なお仕事だ。しかし、放置された巨大な機械仕掛けのマスコットたちが動き出し、遅いかってくる。プレイヤーは5日間、この恐怖に耐え抜き生き延びねばならない。対抗策は、ただ監視カメラをチェックし、警備員室のドアを閉めるのみ。しかも限られた電力で‥‥。

監視カメラを切り替えればアップで映り、急に動き出す巨大マスコットは恐怖でしかない。だるまさんが転んだ的なシンプルなこのゲームは、発売と同時に大ヒットを記録。数々のチャートを席巻し、すぐに続編が制作され、今日までに9つのゲーム、スピンオフ・ゲーム、小説3部作、アンソロジー・シリーズを含むグローバル・フランチャイズが誕生している。日本でも多くのファンを有し、兄者弟者ガッチマンといった人気YouTuberにもプレーされ、ゲーム実況コンテンツとして高い再生数を誇っている。現在はSteamストアで購入できるほか、一部操作や演出が変更されているものの、iPad、iPhone、Android版、3DS、PS Vita、Nintendo Switch版も存在する。

当然、ハリウッド関係者でも注目を浴びたが、ゲームの開発者スコット・カーソンは作品の世界観を台無しにすることを避けるため、すぐに映画化プロジェクトに飛びつくことをしなかった。

ホラー映画の第一人者として名高い、本作の製作を手掛けるジェイソン・ブラムは、10年前にスコットと連絡をとり、1年近くかけて説得、8年かけて信頼関係を築き上げた。準備と制作期間中、ブラムは原作のゲームに忠実であり続け、カーソンのビジョンを信じ続けた。その結果出来上がった本作は2023年12月6日時点で、全世界累計2億8600万ドル以上を稼ぎ、ブラムハウス史上最高の興行収入を記録している。

日本ゲームと映画

いまのスマホゲーム世代はピンとこないかもしれないが、かつて日本はアニメ大国であるとともにゲーム大国でもあった。多くの人気作品はメディアミックスされ小説化、映画化がなされた。

1990年代から2000年代にかけて、多くのゲーム原作映画が生まれ、邦画のみならず洋画の原作として「ストリートファイターⅡ」、「ザ・キング・オブ・ファイターズ」、「デッド オア アライブ」、「鉄拳」といった格闘ゲームが輸出されるようになった。

「スーパーマリオブラザーズ」だって、近年公開され人気を博した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023)の前に、1993年に『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』として、製作費50億円かけて実写映画化されている。クッパをデニス・ホッパーが演じており、キャッチコピーは、「マリオが、ハリウッドを本気にさせちゃった。」「映画のマリオは、やることでかい。」「このヒゲオヤジが、超つよい。」だった。

そして「バイオハザード」は、誰もが知る人気シリーズとして成長。映画化にあたり当初、ゾンビの父ことジョージ・A・ロメロが監督と脚本を担当したが、脚本が却下され降板。その後、ポール・W・S・アンダーソンが監督兼脚本を担当し、ビデオゲームを原作とした映画シリーズとして全世界12億ドル以上といわれる最高興行収入を記録。ゾンビ映画シリーズ、また2017年時点で、ホラー映画シリーズとしても最高興行収入を記録したが、火付け役の1作目にはゲームシリーズとのタイアップはなかった。

© 2002 – Screen Gems – All rights reserved

こう並べるとゲーム原作映画にマイナスの先入観が湧きそうだが、それは、少し改めていただきたい。筆者はFNaFシリーズをプレイしたこともなければ、存在すら知らなかった。しかしながら本作は映画として純粋に楽しめ誰もが共感できるストーリーとなっている。