Jul 24, 2019 column

ブロードウェイ最新レポート〜トニー賞その後、『ムーラン・ルージュ!』への期待

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トニー賞が決まり、結果がプロードウェイの興行に影響を及ぼし始めた。例年のことだが、これもショウビジネスの厳しいところだ。トニー賞その後の悲喜こもごもと、いま一番の話題作をご紹介。

作品賞をはじめとして数々の部門で受賞したミュージカル『ハデスタウン』は、一週間あたりの収益が9万ドルほど上がったのに対して、ノミネートされながらもトニー賞を受賞しなかった『ビー・モア・チル』と『キングコング』は、連日50%前後しか席が埋まらず早くも8月に千秋楽を迎えることになった。どちらももう一度観たかった作品だったが、公演費用を考えれば、賢明な判断なのだろう。『プリティー・ウーマン』『プロム』『シェール・ショー』も同じく閉演が決まり、演劇を含めると12もの作品が9月にはもう観られない。トニー賞直後にこんなにも多くの作品が千秋楽を迎えるのは珍しい。投資家達の損失は、120億円以上にも登ったと言われている。とはいえ、『プロム』はNeflexによって映画化され、『キングコング』は上海公演が決まっている。皆未来へ向けて、それぞれのストーリーを抱えてブロードウェイを去っていく。

その『キングコング』だが、トニー賞授賞式で、スクリーンに映し出されたコングが、背中にダニー・バースタインを乗せて凄い迫力で向かってきたのを、覚えておられるだろうか。「何故、出演していない彼が?」と奇異に感じたかもしれない。しかしあれは彼が出演するミュージカル『ムーラン・ルージュ!』がブロードウェイにやってくる〜!という演出で、実は『キングコング』のメイン・プロデューサーも、『ムーラン・ルージュ!』のメイン・プロデューサーも、同じオーストラリアのGlobal Creatures社だからできたのである。ブロードウェイでは新顔となる同社の社長カルメン・パヴロヴィックの政治力が窺える一場面でもあった。

Boston performance  @by Matthew Murphy, 2018

その『ムーラン・ルージュ!』。2001年の映画『ムーラン・ルージュ』を観た方もおられるかもしれない。バス・ラーマン監督の個性的なスタイルによってヒットした映画だったが、今回彼はCreative Serviceとして舞台に関わっている。舞台はジュークボックス・スタイルだが、よくあるようなアーティストの伝記風ではない。いろいろなアーティスト達のポップ・ヒットが80曲以上も散りばめられている。映画でピックアップされていたエルトン・ジョンやデイビッド・ボウイ、マドンナ、ビートルズはもちろん、2001年以降にヒットしたレディー・ガガやビヨンセなどの40曲あまりも、新登場となっている。