レジェンドクリエイターインタビュー
安彦良和×古川登志夫
[機動戦士ガンダム THE ORIGIN編]
arranged by レジェンド声優プロジェクト
アニメ黄金期を作りあげてきた“巨匠”たちの物語を紐解くレジェンドクリエイターインタビュー。今回お招きしたのは、『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザインなどで知られる安彦良和さん。アニメ黄金期を牽引してきたカリスマクリエイターとして知られる安彦さんの“これまで”そして“これから”を、『機動戦士ガンダム』でカイ・シデン役を務めた声優・古川登志夫が聞き出します!
⇒[めぐりあいガンダム編]はこちら
⇒[安彦良和 THE ORIGIN編]はこちら
- 古川登志夫
(以下、古川): -
現在、第4話までイベント上映されているOVA『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(2015年〜)ですが、その漫画原作(2001年より角川書店『ガンダムエース』にて連載開始)って、どういう経緯でやることになったんですか?
- 安彦良和
(以下、安彦): -
サンライズの2代前の社長をやっていた吉井孝幸さんと、さらにその前の社長だった山浦栄二さんに、ずっとやらないかって口説かれていたんですよ。なんでかと言うと、今、海外にガンダムを売りだそうにも、映像が古すぎてダメなんだと。でも漫画があれば営業できるから、描いてくれないかって。
最初は、なんてことを俺に頼むんだ、そんなの知ったことかって断っていたんですよ。当時の僕は描きたいことを勝手に描いて、すごく幸せだったので、わざわざそんなことをしたくなかったんです。ところが私の息子が「お父さん、やらないの?」って聞いてくるわけです。息子は僕以上にガンダムが好きなんですよ。
- 古川:
-
それで心が動いた?
- 安彦:
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普段、息子は僕の売れない漫画の手伝いをしてくれてるんですけど、それがガンダムになったらこいつも幸せなのかな、ってちょっと思っちゃったんですよね。……決め手はそれだったかもしれないなぁ。
- 古川:
-
息子さん、グッジョブですね!
- 安彦:
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それでも最初は不本意だったんですよ。でも、始めたら、確かにあれは今さら人に観てもらうレベルじゃないよなぁ、吉井さんたちの言うことももっともだなと思い始めて、だんだんその気になっていっちゃった。
- 古川:
-
気がつけば10年の長期連載になりましたもんね。
- 安彦:
-
本当は3分の1くらいの長さで終わる予定だったんですよ。富野由悠季が映画の三部作でまとめたやつがありますから、それをベースにすればいいやって。それなら3年くらいで終わるだろうって。ただ、やり始めると、彼が捨てた部分が気になってくるんだよね。もったいねぇなって(笑)。そうこうしていたら過去編まで描くことになって10年経っていたというわけ。
- 古川:
-
その長大な物語の中で、僕が一番好きなのはやっぱり、ミハルの出てくる一連のエピソードなんですよね。それで今年の正月はなんとベルファストに行ってきたんですよ。うちのかみさんが「カイ・シデンをやっているあなたが、ベルファストに行かない手はない」ってプランを立ててくれたんです。しかも、何を思ったのか、連邦軍の女性兵士のコスチュームをトランクに入れてきて、現地でコスプレするって言うんですよ。
- 安彦:
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えっ? それは本当の話?
- 古川:
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本当ですよ。連邦軍の制服を着て、ベルファストの港で写真を撮って、それらしい小高い丘に登って、ここでカイとミハルが……みたいなことを想定しながら、また写真をパチパチッと。ガンダムオタクでしょう?(笑) ベルファストって、ガンダムファンにとっては聖地なんですけど、さすがに遠すぎて、日本人観光客なんて誰もいないんですよ。だから、かみさんが連邦軍の制服を着てても誰も気がつかないんです。
- 安彦:
-
当時のベルファストは物騒でしたけど、今はそういうことをやっても大丈夫なくらいにはなっているんですね。
- 古川:
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世界的には、映画『タイタニック』(1997年)で脚光を浴びたみたいですね。タイタニック号が造船された土地ということで。なので、外国人の観光客はけっこう多かったですよ。