第32回東京国際映画祭コンペティション部門で「最優秀芸術貢献賞」、第33回中国金鶏奨で「最優秀監督賞」を受賞した中国映画の「Chaogtu with Sarula」(中国語原題、白雲之下)が映画『大地と白い雲』の邦題で全国公開される。
内モンゴルに広がるフルンボイル草原に暮らす一組の夫婦。夫のチョクトは都会での生活を望んでいるが、妻のサロールは今の暮らしに満足している。ここではないどこかへ思いを巡らせ、ふらりといなくなるチョクトに腹を立てながらも、彼を愛するサロール。どこまでも続く大地、空を流れる白い雲。羊は群れをなし、馬が草原を駆けぬける。しかし、自由なはずの草原の暮らしにも少しずつ変化が訪れ、徐々に二人の気持ちがすれ違いはじめる。
北京電影学院の教授も務める中国エンターテイメント映画の俊英ワン・ルイ監督が、内モンゴル出身の作家・漠月(モー・ユエ)の小説「放羊的女人」を原作に10年の歳月をかけて映画化。ワン監督が、自身の過去の痛みに向き合い、亡き妻に捧げた夫婦の愛の物語となっている。愛する人と生きていきたい、ただそれだけのことがうまくいかない不器用でまっすぐな夫婦を演じるのは、ともに遊牧民の家庭で生まれ育った俳優のジリムトゥと歌手のタナ。
公開を直前に控え、歌手の加藤登紀子は「嘘のない本当の愛が伝わってくる素敵な映画」と応援コメントを寄せた。ノンフィクション作家の高野秀行は「人は誰しも自分の住む世界とは別の世界に憧れる。別の世界を夢みる者を押しとどめることができるなら、方法は二つしかない。一つは旅をすること、もう一つは本や映画を通じて別の世界を見聞すること」と改めて”映画を観る醍醐味”を確認できたとコメント。
映画『大地と白い雲』の撮影秘話に限らず、中国映画業界の変化や、映画監督を志す若者たちへのメッセージなど多岐にわたり語る、ワン監督のインタビューの一部をご紹介。
――今回、短編小説「放羊的女人」を原作に、映画化しようと思った理由は?
原作小説を読んだのは10数年前。最初は妻が夫を探していたけれど、最後には夫が妻を探している。この対比が面白く、映画化したいと思った。
――自然の変化だけでなく、社会の変化も映し出されている。
映画というのは、その時代の記録にもなる。映画を通して今、現在を記録する。そういう意味で、このような映画を撮影することは重要で、ドキュメンタリストのような気持ちで挑んだ。
――ワン監督もチョクトのように自分のしたいことをして生きてきた?
私は長らく北京電影学院の教師をしているが、できることならずっと映画をとっていたいというのが本音。でも、現実は毎日学校に行かなければならず、映画監督として使える時間がほとんどない。どれだけ自分の心に忠実に生きられるのかを人間として考えねばならない。誰しも困惑の中で生きていると思うし、明確な答えはなかなか出せるものでは無い。
――中国映画業界の変化をどのように感じる?
ここ20年、中国映画に多くの資本が投入されるようになり、観客が映画館に戻り、産業が活性化された。でもいいことばかりではなく、映画の評価が興行収入に左右され、一挙に何億元と言う大きな数字を弾き出す映画が「いい映画」と思われているような状況が生まれている。素晴らしい映画が興行的にも成功するようになるにはもう少し時間が必要だと思う。
――今、映画監督を目指す若者たちにメッセージを。
若者に伝えたいのは「誠実な映画を撮ってください」ということ。芸術的なものであれ、商業的なものであれ、誠心誠意、撮ることが大事。「真善美」という言葉があるが、それが映画で実現できるかどうかは撮る人にかかっている。
草原と都会、二つの異なる世界を知る二人が、遊牧民としてのアイデンティティと現代的な価値観の間で揺らぐ若い夫婦の心の機微を繊細に捉え、圧倒的な自然の中で生きてきた人間のたくましさと強い存在感を放つ、映画『大地と白い雲』は、8月21日(土)より岩波ホールほか全国公開。
内モンゴルに広がるフルンボイル草原に暮らす一組の夫婦。夫のチョクトは都会での生活を望んでいるが、妻のサロールは今の暮らしに満足している。ここではないどこかへ思いを巡らせ、ふらりといなくなるチョクトに腹を立てながらも、彼を愛するサロール。どこまでも続く大地、空を流れる白い雲。羊は群れをなし、馬が草原を駆けぬける。しかし、自由なはずの草原の暮らしにも少しずつ変化が訪れ、徐々に二人の気持ちがすれ違いはじめる。そして、ある冬の夜、二人は大きな喪失を経験する。その日を境に、サロールと草原で生きる覚悟を決めたチョクトだったが…。
監督:ワン・ルイ
原作:「⽺飼いの⼥」漠⽉著
出演:ジリムトゥ、タナ、ゲリルナスン、イリチ、チナリトゥ、ハスチチゲ
配給:ハーク
配給協⼒:EACH TIME
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2021年8月21日(土) 岩波ホールほか全国公開
公式サイト hark3.com/daichi/