シリーズ第6作(にして、そのパート3~5を一挙になかったことにするという)、『ニュー・フェイト』がやってくる『ターミネーター』。1991年の『ターミネーター2』以来、28年間シリーズに背を向けてきた監督ジェームズ・キャメロンが製作を務め、同じく主演女優リンダ・ハミルトンが満を持して復帰する。おなじみアーノルド・シュワルツェネッガーが続投、ここに黄金の布陣がついに再結集を果たした。そのうえでまったく新しい物語が始まるというから、今度こそはついにと期待してしまう。そう思うのは自分だけではなかろうからとりあえず劇場に足を運んでいただくとして、今回は公開を機に、シリーズの歩んだ歴史を(主に前半2編を中心に)振り返っていきたい。
『T2』の“正統な続編”、最新作の見どころ
すでにご存知の方は多いことと思うが、最新作『ターミネーター:ニュー・フェイト』は『ターミネーター2』から直接繋がる、公式曰く“正統な続編”なのだという。『ターミネーター3』(03年)、『ターミネーター4』(09年)、そして『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(15年)をこの際丸々なかったことにしてまったく新しい物語が幕を開ける今回。
最近の超大作は概ねそうだが、ここで少しでもその内容について触れると盛大にネタを割ることになってしまうので自粛したい。少なくとも言えるのは前作、つまり『T2』で人類の滅亡を防いだサラ・コナーとその息子ジョンが今回揃って再登場するということだ。しかし前回溶鉱炉に姿を消して、全世界の観客を泣きに泣かせたシュワルツェネッガーのターミネーターまで再登場するのはいったいどういうことだろう。そうしたおなじみの要素に加え、今回はさらに最新殺人マシーンREV-9(ガブリエル・ルナ)、およびこれを追って未来からやってくる謎の戦士グレース(マッケンジー・デイヴィス)、そして新たな物語の鍵を握る女性ダニー(ナタリア・レイエス)ら、新たなキャラクターも大挙登場。特に『ブレードランナー2049』(17年)も印象深かったデイヴィスの、身体を張ったヤケクソの大活躍が素晴らしい。
『デッドプール』(16年)をまとめ上げた監督ティム・ミラーがたしかな手際を見せる今回、ここから新たなサーガが続くかどうかは何しろ世界中の観客にかかっているので、ぜひ劇場に足を運んでいただきたい。
シリーズの原点、1984年の第1作
という『ターミネーター』シリーズについていまさら改めて紹介するのも若干気が引けるが、念のためにその第1部をおさらいしておこう。1作目の舞台は1984年。2029年の未来から時間を超えて、二人の男が現代にやって来る。二人の男、というのはじつは正確ではない。一人の男と、1体のアンドロイド。後者の狙いは84年のロサンゼルスで生活する女性、サラ・コナーを抹殺すること。人間の男、カイル・リースの目的は、コナーを殺人アンドロイドことターミネーターから守り抜くことだ。
現代を生きる人々には知る由もないことだが、2029年の時点で人類の文明は崩壊している。すべては1997年8月29日、防衛システムとして作られた人工知能、スカイネットが自我に目覚めた瞬間に始まった。人類を地球に対する最大の脅威と判断したスカイネットはその殲滅を決定。その日のうちに人類に向けた全面核攻撃を開始し、瞬く間に文明社会は滅び去った。
わずかに生き残った人間たちは反乱軍を組織。レジスタンスは徐々にその勢力を拡大し、2029年にはついにスカイネットを敗北の一歩手前まで追い込むことに成功する。この抵抗軍を率いた男の名前がジョン・コナー。1984年のロサンゼルスで命を狙われることになる女性、サラ・コナーの息子だった。劣勢に追い込まれたスカイネットはこの際、反乱軍のリーダーをその誕生前に抹殺すべしと決め、過去に遡って実の母を抹殺する決定を下したのだ。
かくしてLAに住む同姓同名の人物を一人ずつ、着実に始末して回る殺人マシーン、ターミネーター。サラ・コナーその人としてみればいったい何が起こっているのかさえも分からない。だが信じられないほど屈強な男が、銃で撃たれても車で撥ねられても、そのたびに立ち上がって追いかけてくる。こうして絶望的な逃避行が始まった…。