コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第142回
北野武監督が、9月25日にイイノホールで行われた、映画『アウトレイジ 最終章』のジャパンプレミアに出席した。
「北野監督の現場は戦える現場というか、豊かな緊張感をはらんだ怖い現場でした」と振り返る、花菱会会長【野村】役の大杉漣。
「北野組に参加できて、役者人生で最高の日でした。現場は緊張感が高くて、組長役なんですが怯えながら演じてました(笑)」と恐縮する、山王会木村組【吉岡】役の池内博之。
「28歳の時に『その男、凶暴につき』に出演させて頂いて、あの頃は飲み屋に行ったら『あ、殺し屋だ!』と言われたりもしました・・・」と回顧しながら、胸にグッとくるものがあり声を詰まらせる、張の側近【李】役の白竜。
「(最初の)『アウトレイジ』に加瀬亮君が出てて嫉妬し、次の『アウトレイジ ビヨンド』には桐谷健太君と新井浩文君が出ていてまた嫉妬し、恨みつらみが溜まっていたんですが、今回の『アウトレイジ 最終章』でやっと出ることができたので夢が叶いました」と喜びを爆発させる、【市川】役の大森南朋。
あらゆる役者を魅了し、あらゆる役者の心を鷲掴みにする北野監督。 そんな北野監督の新たな代表作と言ってもいい『アウトレイジ』シリーズも、今回で最終章を迎えるわけだが、そのことに関して北野監督は「深作欣二監督の『仁義なき戦い』シリーズみたいになると、死んだ人がまた出てくるような作品になってしまうので、今回で一度締めということで、そうしました」と吐露。
また、起用した俳優たちについては「ありがたいことに、日本を代表する役者さんがみんなOKしてくれて。現場では何もしなくても、台本を渡せば勝手に進行してしまうという。ただ、西田さん(花菱会若頭【西野】役の西田敏行)のアドリブには困りましたが(笑)」と、笑いを交え感謝の言葉を口にしていた。
その西田はというと、撮影前に頸椎の亜脱臼や胆のうの摘出などの大病に冒されていたが、同じく花菱会の若頭補佐【中田】役を務めた塩見三省も、脳出血を患い障害が残る中で撮影初日を迎えることになったのだが、西田は当時を振り返り「(塩見と)お互いにリハビリをし、皆さんに抱えられながら撮影の初日を迎えた時は、何とも言えない喜びがありました」と感慨深く語ると、塩見も「前作に続き、また北野監督と仕事ができたことは、私にとって最高の喜びであり、最高の時間でした。ありがとうございました!」と、未だ後遺症が残る中で懸命に言葉を紡ぐ姿が印象的だった。
最後に、北野監督は「次は日本の役者オールスターズでとんでもない映画を撮ってみたいですね」と、新たなる野望をのぞかせていた。
当日はその他、出演のピエール瀧、松重豊、名高達男、光石研、金田時男、岸部一徳が出席した。
映画『アウトレイジ 最終章』(ワーナー/オフィス北野配給)
映画『アウトレイジ 最終章』(ワーナー/オフィス北野配給)は、関東最大の暴力団組織「山王会」と、関西の雄「花菱会」との抗争を描いた前作『アウトレイジ ビヨンド』のその後を舞台に、さらなる抗争へと発展していく様子を描き出したシリーズ最終章。
監督・脚本:北野武 出演:ビートたけし、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、大杉漣、塩見三省、白竜、名高達男、光石研、原田泰造、池内博之、津田寛治、金田時男、中村育二、岸部一徳 ほか