Feb 25, 2026 column

Apple TVの社会派スパイドラマ「テヘラン」はアクションが潤沢なラブストーリー (vol.83)

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イラン情勢が緊迫化し、さらにアカデミー賞国際長編映画賞に反体制派のイラン出身監督映画が仏国のオスカー候補になる中、Apple TVシリーズ「テヘラン」待望シーズン3がようやく先月からスタートした。イスラエル諜報員でありながら、故郷テヘランの愛を捨てられない元イラン生まれのユダヤ人女性スパイを中心に、国家間の対立、その家族など、様々な角度の人間ドラマを描き出し、確実にファン層を構築している。壮大なサスペンスが待ち受けるシーズン3を見る前に、このコラムではシーズン1と2の見どころをご紹介。

女性スパイを追いかける男たち

イスラエル諜報特務庁、モサドの諜報員タマールは美しい女性。フライト・アテンダントとなってイランに密入国の際、拘束されたイスラエル人乗客がタマルの顔に気づき、「あなたはイスラエル軍の兵士だったでしょ? 」と尋問。緊張で顔を固くしながらも「人違いよ」とその場をすり抜けて密入国に成功するタマル。そこには偶然、イラン革命防衛隊諜報部長のファラズが居合わせていた。ファラズは妻想いの中年男性で、妻の手術に付き添うためにテヘラン空港でフランス行きの便に乗るターミナルにいた。イラン人女性フライトアテンダントの制服を着て、トイレから出てきたヒジャブ装の女性の映像がモサド諜報員だと確信したファラズは、妻の手術に付き添わずに、イラン国内に残ってタマールの行方を追うことで、彼の運命が大きく変わっていく。2人の執着は全く別の目的で国家任務を遂行していながら、イランのため、イランの民を愛する想いは同じ。2人の宿敵が複雑に混じり合う因縁が、このドラマの鍵となっている。

まるで現在のイラン情勢を予測したかのような題材が扱われる配信ドラマ「テヘラン」。シーズン1でのイランの空軍防衛を妨害。シーズン2では、イラン革命防衛隊の国防省長官の暗殺、そしてシーズン3のイラン核兵器製造の真相を追求する内容は、あまりにも実際のイランを巡るニュースと似通っている。イスラエルTV、KANで2024年12月に放送されたシーズン3は、翌年2025年7月の米配信を予定していたが、トランプ米政権がイスラエル軍と合同作戦でイラン核施設を6月に攻撃。「テヘラン」シーズン3のリリースはさらに延期され、今年2026年1月9日とシリーズの配信にまで影響している。

現在、イスラエルが米国と合同でイランを大規模に攻撃する可能性が高まり、ヨーロッパや中東での緊張が高まるなか、ドラマのイスラエル女性でクリエイター兼エグゼクティブ・プロデューサーのデイナ・エデンがシーズン4撮影中のロケ先、ギリシャで亡くなった。薬による自殺が死因とみられており検死結果が待たれている。ファンは陰謀説を説くほどにこの事件に関心大。関係者は一斉、それらを否定しているものの、いかにこのドラマが現実と切実な点で似通っていて、その社会派な内容に注目が集まっていることがわかる。国家間の外交の取引きやスパイ同士の駆け引きがドラマになることは多々あるものの、このシリーズのリアルな中東情勢の描き方は、両大国の陰謀の元で、苦しむ底辺の人たちの姿を浮き彫りにしている。