レジェンド声優インタビュー
小山茉美[アニメ声優立志編]
arranged by レジェンド声優プロジェクト
アニメ黄金期の立役者である「レジェンド声優」と、自らもレジェンドである声優・古川登志夫さん、平野文さんによる濃密トークをお送りするレジェンド声優インタビュー。今回は、80年代アニメ&洋画吹き替えで圧倒的な存在感を示していた小山茉美さんが登場!「声優をなめていた」というデビュー直後の苦い失敗から、アニメファンに衝撃を与えた“空白の一年”、そして現在の活動について語っていただきました。
- 平野文:
(以下、平野) 今回のゲストもとってもゴージャス! なんとレジェンド声優・小山茉美さんをお迎えしています。
- 古川登志夫:
(以下、古川) 美女2人に囲まれて、テンション上がっております!
- 小山茉美:
(以下、小山) よろしくお願いします。久しぶりにあえてすごくうれしい!!
- 古川:
この3人だと本当に話題が尽きないんだけど、まずはお約束と言うことで、茉美ちゃんのデビュー前後の話を聞かせてもらいたいかな。何がきっかけで声優をやることになったの?
- 小山:
私は愛知県出身なんですけど、ずっと学生演劇をやっていて、東京の某私立大学の文学部演劇科を目指していたんです。でも、当時は学生運動が大変な時代で……。とてもじゃないけど娘を1人上京させるわけにはいかない社会情勢だったんですよ。
それでせめてもと地元の劇団に入ったんですが、入った直後に、山田太一さん脚本の、NHK芸術祭参加作品のラジオドラマの主役に抜擢していただけたんです。それが縁でNHK名古屋制作のドラマ(NHK少年ドラマ「キヨ子は泣くもんか」など)に出させてもらうようになり、気がついたら上京してました(笑)。
- 平野:
上京したときはドラマの俳優さんとして?
- 小山:
そうですね。もちろん映像の仕事をやりたかったんだけど、たまたま声の仕事をやったらどうかって話があって……。
- 古川:
おお、そこで声優デビューですか!
- 小山:
そうなんです。でもごめんなさい! その当時の私は声優の仕事を甘く見ていました。アニメだからセリフを覚えなくていいし、絵を見てその通りに喋ればいいんでしょとか思ってたんです……。でも、やってみたらあまりにも難しくて打ちのめされました。
- 平野:
どのあたりが難しかったんですか?
- 小山:
もう何もかもがわけわからなかった! 絵に合わせるもなにも、絵が入っていなかったし(笑)。初めてのアニメは『一休さん』(1975~1982年)の桔梗屋弥生ちゃんという役だったんですが、この子がまた良く喋るんです。しかも、自分自身まだ十代だったから、キャラクターに合わせた芝居ができるわけでもなし……。
- 古川:
最初からセリフが多いというのは大変だ。僕なんかはデビュー作はたった一言だったので、比べものにならないね(笑)。
- 小山:
しかも、周りはそうそうたるメンバーなわけ。どこかで聴いたことあるような声が飛び交っているわけですよ。もう、完全に舞い上がってしまって……。それであまりにもお粗末すぎて、3本やったところで「君、もう来なくていいよ」って言われちゃいました(編集部注:以降、吉田理保子さんにバトンタッチ)。
さすがにものすごいショックを受けたんですが、それで並大抵の覚悟じゃできない仕事だってことがよく分かりましたね。気合いを入れてやり直そうって、心を入れ替えました。
- 平野:
茉美ちゃんの女優魂に火がついたのね。
- 小山:
本当だったら新しい仕事なんてもらえなくなるほどの失敗だったんだけど、先輩の野沢雅子さん(『ドラゴンボール』孫悟空役など)や、松島みのり(『キャンディ・キャンディ』キャンディ役など)さん方が、「茉美ちゃんめげるな、がんばりなさい!」って応援してくださったの。それで続けることができたんですよね。