ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロの鮮烈なデビュー作「遠い山なみの光」(ハヤカワ文庫)を、『ある男』で第46回日本アカデミー賞において最優秀作品賞を含む最多8部門を受賞をした、石川慶監督が映画化する。
2017年にノーベル文学賞を受賞し、「日の名残り」「わたしを離さないで」など、映画化作品でも非常に高い評価を受ける作家カズオ・イシグロが、1982年に綴り、王立文学協会賞を受賞した長編小説デビュー作品「遠い山なみの光」。自身の出生地長崎を舞台に、戦後間もない1950年代の長崎、そして1980年代のイギリスという、時代と場所を超えて交錯する“記憶”の秘密を紐解いていくヒューマンミステリーが展開される。今回の映画化にあたっては、カズオ・イシグロ自身もエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねる。
日本人の母とイギリス人の父を持ち、ロンドンで暮らすニキ。大学を中退し作家を目指す彼女は、自著執筆のため、異父姉の死以来足が遠のいていた、母が一人で暮らす郊外の実家を訪れる。母の悦子は、長崎で原爆を経験し、戦後イギリスに渡ってきていたが、ニキは母の過去を何一つ聞いたことがない。夫と長女を亡くし、想い出の詰まった家で一人暮らしていた悦子は、ニキと数日間を共にする中で、最近よく見るという、ある「夢」について語り始める。それはまだ悦子が長崎で暮らしていた頃に知り合った、とある女性と、その幼い娘の夢だった。
監督を務めるのは、ポーランド国立映画大学で演出を学び、2017年にベネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門に選出された『愚行録』で長編デビュー、以降、『蜜蜂と遠雷』『ある男』などで高い評価を得る石川慶。主人公の悦子役は、広瀬すずが演じる。
また、本作の企画を手掛けるのは、イギリスで映画制作を学び、細田守監督作『竜とそばかすの姫』の制作プロデューサーも務めた石黒裕之。さらに、是枝裕和監督の制作者集団「分福」に所属し、石川慶監督も参加した短編オムニバス『十年 Ten Years Japan』、国際共同製作作品『真実』、『ベイビー・ブローカー』などのプロデューサーを務める福間美由紀が石黒とタッグを組む。そこに『キャロル』『生きる LIVING』などを製作し、世界三大映画祭、英国・米国アカデミー賞の常連でもある、イギリストップクラスのインディペンデントプロダクションNumber 9 Filmsが加わり、日英合作の国際プロジェクトとして本作が誕生する。