2017年、ニューヨーク・タイムズ紙に衝撃のスクープが掲載された。のちに“性犯罪告発運動”、#MeToo運動を爆発させたハーヴェイ・ワインスタイン事件。ハリウッドで“神”と呼ばれた映画プロデューサーの数十年に及ぶ性的暴行事件を告発したその記事は、翌年ジャーナリズムの権威であるピューリッツァー賞を受賞、さらに映画業界や国を超えて世界中の性犯罪、セクシャルハラスメントの被害の声を促すことに。
名もなき女性たちを懸命に取材した調査報道に基づき、社会を動かした勇気ある女性たちとジャーナリストの物語を描く、映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』。
主演の2人の女性記者に扮するのは、アカデミー賞に2度ノミネートされたキャリー・マリガン(『プロミシング・ヤング・ウーマン』『17歳の肖像』『華麗なるギャツビー』)とゾーイ・カザン(TVシリーズ『プロット・アゲンスト・アメリカ』『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』)。
権力や迫りくる圧力に屈することなく、卑劣で悪質な本スクープを暴いたニューヨーク・タイムズ紙の勇敢な女性記者ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターによる、この調査報道のありのままの姿を映画化するにあたり、監督のマリア・シュラーダーとアルゼンチン人撮影監督のナターシャ・ブライエは、全て実際の出来事かつ実在する登場人物に基づいてストーリー展開が行われる本作だからこそ、感情的な瞬間をドラマチックに描きすぎないよう、極めて“慎ましい撮影法”で捉えることを選択したという。
「登場人物に焦点を当て、彼らが動くときだけカメラを動かすようにした。近づきすぎることで劇中の感情を押し潰さないようにし、エンタメ作品をつくるのではなく、窓枠から物語を見ているような感覚を作ろうと努めた。」と話すシュラーダー監督の思惑通り、映画とドキュメンタリーの中間に位置するかのようなナチュラルなカメラワークを見事構築。
撮影のブライエもカメラの存在に観客の気が逸れてしまわないように細心の注意を払ったようで、「映画を観ているのではなく、誰かのリアルな人生を観ていると観客に感じてもらうことをめざしていった。」と振り返る。
真実を明らかにするために奔走する人物を丁寧に追い、観客に没入感を与える、緻密に計算された撮影方法のインスピレーションの源としてブライエが挙げるのが、生前数多くの映画賞に輝き、アカデミー賞の名誉賞にも選ばれた撮影監督ゴードン・ウィリスの映画『大統領の陰謀』(1976)。
「大半のシーンが綿密に計画され、考え抜かれた固定ショットで成り立っているにもかかわらず、つくり込まれすぎていないリアルさがある。カメラは感情の動きや物語の展開を表すために必要なときのみ動く。映画制作におけるこのような工夫が観客の気を引くことはない。むしろそれは物語を支えると同時に、現実との“純粋な”つながりを感じさせることで、観客を惹きつける」とウィリスに対する熱いリスペクトを覗かせながら、本作で取り入れた撮影方法のルーツについて明かした。
また、リアリティの実現において忘れてはならないのが“ロケ地”。ここ数年、世界中で猛威をふるった新型コロナウイルスにより、撮影中断や縮小に追い込まれた作品も数多く存在したなか、本作においてはコロナ禍が逆に奏功し、なんと記者・編集者・その他スタッフがリモートワーク中心となったことで実際のニューヨーク・タイムズのオフィスがほとんど使用されておらず、奇跡的に本物のニューヨーク・タイムズビルでの撮影が実現。マンハッタンのミッドタウンにあるオフィスで、ニューヨーク・タイムズによる積極的なサポートの元、2週間に及ぶ撮影が敢行された。
この規模の映画撮影が許可されたのは過去に前例がなく、シュラーダー監督も「ニューヨーク・タイムズのビルで撮影できたことは本作の最大のギフトの一つだった」と実際の舞台で撮影が叶った喜びを明かしているほか、リモートワークが本格的に導入された2020年の春からタイムカプセルのなかで保存されてきたかのようなオフィスの様子について「まるでポンペイの遺跡のようだった」とも振り返っている。
世界を変えたこの重大な真実を追い求めた記者たちが、実際に覚悟を持って働いていたまさにその舞台であるニューヨーク・タイムズ ビルの空気をまとった、非常に貴重な映像となっている。
事件を一つのエンタメ作品として消費するのではなく、一体そのとき何が起こっていたのか、登場人物たちは何を見て、どんな想いを胸に抱えていたのか。それぞれに深く寄り添った丁寧な描写と緻密に計算されたカメラワークで描かれる本作。
アカデミー賞常連のプランBが製作し、本年度のゴールデングローブ賞にてキャリー・マリガンが助演女優賞、サテライト賞、ブロードキャスト映画賞の脚色賞にて脚本のレベッカ・レンキェヴィチがノミネートするなど、賞レースの目玉として注目を集めている。
映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』は、2023年1月13日(金)より全国公開。
2017年、ニューヨーク・タイムズ紙に衝撃のスクープが掲載された。のちに“性犯罪告発運動”、#MeToo運動を爆発させたハーヴェイ・ワインスタイン事件。ハリウッドで“神”と呼ばれた映画プロデューサーの数十年に及ぶ性的暴行事件を告発したその記事は、翌年ジャーナリズムの権威であるピューリッツァー賞を受賞、さらに映画業界や国を超えて世界中の性犯罪、セクシャルハラスメントの被害の声を促すことに。名もなき女性たちを懸命に取材した調査報道に基づき、社会を動かした勇気ある女性たちとジャーナリストの物語を描く。
監督:マリア・シュラーダー
製作総指揮:ブラッド・ピット、リラ・ヤコブ、ミーガン・エリソン、スー・ネイグル
原作:『その名を暴け―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―』ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー/著(新潮文庫刊)古屋美登里 / 訳
出演:キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリー、サマンサ・モートン ほか
配給:東宝東和
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2023年1月13日(金) 全国公開
公式サイト shesaid-sononawoabake.jp