【コメント】
▼三浦浩一
球磨川のほとりで代々旅館を営む主人・宏一を演じた。とてつもない豪雨の中、父親が目の前で濁流にのみ込まれた。恐怖と深い悲しみで心を閉ざし妻とも話さなくなった。涙も枯れ果てた宏一をほぼ無表情で演じる場面が多かった。土の塊を放り上げ、角材をノックバットにしてひたすら打つ!土の塊が破裂する。久しぶりに故郷に帰った幼馴染み孝之を演じる中原丈雄さんとの会話は、不思議なくらい懐かしさを感じた。清水美砂さん演じる妻・雪子には、優しさと明るさ芯の強さを感じた。彼女の存在にきっと宏一は救われた。球磨川の流れを見ながら孝之が中学生だった頃の話しをした時、唯一宏一の顔がほころんだ。三人はそれぞれ何処に向かうのだろう。是非劇場でご覧ください。
▼篠崎彩奈
樹里は東京で生活していて、地元に帰ってきて被害の大きさを初めて目の当たりにします。少しでも力になりたいという気持ちが強く、芯の強い役柄だと思います。渡辺裕太さんとは初めての共演でしたが、文則の不器用で優しい空気感を渡辺さん自身も纏っていて、樹里として生きやすかったです。文則にとって樹里との再会は大切な場面だと思うので大切に演じました。熊本県は初めて行かせていただきましたが、美味しいお酒と食べ物、温泉もたくさんあってとっても幸せな撮影期間でした!ぜひ、劇場でご覧ください。
▼不破万作
米農家の直彦は、自然相手に生きていて、球磨川の洪水を何度か経験してきたと思う。しかし、その洪水を防ぐために遊水池を造り、水の調節をはかる計画が持ち上がった。そうなれば自分の土地を失うことになるだろう。彼は国から立ち退きの打診があるまでは、かたくなに米を作り続けるだろう。こういう実直な人物は好きなので、自然にやれたと思う。また女房役の宮崎美子さんも、主役の中原丈雄さんも楽しそうに演じられていました。この直彦に、はたして河は何をささやいていたのか、どうぞ劇場でご覧ください。
▼宮崎美子
2020年7月3日、私は偶然人吉を訪れていました。あのくま川鉄道で赤い鉄橋を渡り人吉駅に到着した最後の乗客の一人です。その後再訪した折りにお会いした多くの方が、球磨川のことを決して悪く言わないことに強い感銘を受けました。私の演じたさとみも、痛みよりずっと恵みを与えてくれた川だから、またここで暮らすのは当たり前だと考えているのだと思います。明るく飾らない自然体の不破さんと寡黙で微笑みが雄弁な中原さんとのやりとりは、お互いへの信頼がにじむ心なごむものでした。皆様にもぜひ劇場で、川と共にある暮らしの息づかいを感じていただければと思います。
映画『囁きの河』は、2025年6月27日(金)より熊本県先行公開。 7月11日(金)より全国順次公開。

2020年、熊本を襲った豪雨から半年。母の訃報を受けた孝之は 22年ぶりに帰郷するが、仮設住宅で暮らす息子の文則は、かつて自分を捨てた父に心を開こうとしない。幼馴染の宏一が営む旅館「三日月荘」もまた半壊の痛手を負っていた。女将の雪子が再建を願う一方、父を土砂で亡くした宏一は前を向けず、災害は夫婦の間にも亀裂を生む。その頃、球磨川くだりの再開を信じて船頭を志す文則は、かつての同級生・樹里と再会。隣人の直彦と妻のさとみは仮設から自宅に戻ることを決め、孝之も水害で荒れた田畑の開墾に希望を見出していく。「居場所ばなくしたら、自分で取り戻すしかなか」河とともに生きてきた人々は、それぞれの歩み方で明日へ進もうとしていた。
監督・脚本:⼤⽊⼀史
出演:中原丈雄、清⽔美砂、三浦浩⼀、渡辺裕太、篠崎彩奈、カジ、輝有⼦、⽊⼝耀、宮﨑三枝、永⽥政司、堀尾嘉恵、福永和⼦、⽩砂昌⼀、⾜達英明、寺⽥路恵、不破万作、宮崎美⼦
配給:渋⾕プロダクション
©Misty Film
2025年6月27日(金) 熊本県・熊本ピカデリーにて先行公開
2025年7月11日(金) 池袋シネマ・ロサほかにて全国順次公開
公式サイト sasayakinokawa-movie