コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第214回
俳優の松坂桃李が、5月12日に丸の内TOEI①で行われた、映画『孤狼の血』の初日舞台挨拶に登壇した。
本作で、役所広司扮するダーティな刑事【大上章吾】とバディを組むことになる、一流大学出の刑事【日岡秀一】を演じた松坂は「30歳になる節目に、役所さんともう一度仕事できるとは思ってなかったですし、白石さん(白石和彌監督)とこうも早く仕事できるとは思っていなかったので、僕の中で忘れられない特別な作品になりました」と感慨深く挨拶すると、松坂より遥かに大先輩で俳優生活40周年を迎える役所は「ギリギリ体力がもったかな(笑)」と照れ笑いを浮かべながらも、「40周年にこの作品と出会えて幸せでした」と熱く語っていた。
さらに、役所が「松坂君も40周年の時には全裸で仕事してるんじゃないですか?(笑)」と、現在大ヒット公開中の映画『娼年』にて文字通りまさに体当たりで主演を務めている松坂を揶揄すると、「今回の映画ではそういうシーンはないですから!(笑)」と、すぐさま観客に訴える松坂だった。
また、松坂は「役所さんとは『日本のいちばん長い日』から2本目なんですが、今回はバディという関係性から、勝手に親のような師匠のような大先輩のような色々なものが混ざっていたんですが、やっぱり役所さんの存在は大きくて分厚くて遠いなと思いました」と、改めて役所に対し尊敬の念を抱くと、一方の役所は「松坂君はカッコイイですからね(笑)。繊細に役をラストシーンまで積み上げていくプランを持っている素晴らしい役者です。真っ直ぐな目の力は共演者として頼もしかったです」と、俳優としての後輩の姿勢を称賛していた。
なお、作家生活10周年を迎え、映画公開初日となったこの日は自身の誕生日でもあった、原作者の柚月裕子は「小説で書いていた熱さというものを白石監督がしっかりと受け止めてくださって、小説以上の3倍、4倍くらいの熱さを描いてくれました。皆さんも映画を観終わると、その熱さと元気を抱いて劇場を後にすると思います」と、これから映画を鑑賞する観客へメッセージを伝えると、役所も「こういう映画は自分の若い頃にたくさんあって、それで男の子たちは男を磨いてきました。こういう映画が増えると今の男の子たちももっと牙が生えてくると思います」と、ゆとり世代? の若者たちへ熱いメッセージを届けていた。
舞台挨拶にはその他、白石和彌監督、出演の真木よう子、音尾琢真、中村倫也、阿部純子、ピエール瀧、江口洋介が登壇した。
映画『孤狼の血』(東映配給)
映画『孤狼の血』(東映配給)は、広島の架空都市・呉原を舞台に、地場の暴力団・尾谷組と、新たに進出してきた広島の巨大組織・五十子会系の加古村組の抗争、そして事件の捜査にあたる刑事たちの姿を描き、「警察小説×『仁義なき戦い』」と評された柚月裕子による同名小説を映画化した作品。
監督:白石和彌 脚本:池上純哉 出演:役所広司、松坂桃李、真木よう子、滝藤賢一、音尾琢真、駿河太郎、中村倫也、中村獅童、矢島健一、田口トモロヲ、ピエール瀧、石橋蓮司、江口洋介、竹野内豊、阿部純子、嶋田久作、伊吹吾郎、岩永ジョーイ、MEGUMI、井上肇、さいねい龍二、黒石高大、町田マリー、勝矢、田中偉登 ほか