コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第200回
俳優の松坂桃李が、3月12日にTOHOシネマズ新宿で行われた、映画『娼年』の完成披露試写会舞台挨拶に登壇した。
女性に買われる「娼夫」として生きる男の生き様を、2015年に上演され話題を集めた衝撃の舞台版と同じく、三浦大輔監督と松坂主演で映画化した本作。まさに、体当たりの演技で主人公の【森中領】を体現した松坂だが、この日の舞台挨拶ではそんな松坂演じる領を買う、豪華女優陣が一堂に顔をそろえた。
マイクを手にした松坂は「緊張や期待や不安もありますが、この作品で何かあったら僕のせいでもありますけど、三浦さん(三浦大輔監督)のせいでもあります(笑)。『責任を割り勘しよう』と舞台からやってきましたが、このメンバーなら怖いものはないですね」と自信をのぞかせつつ、「三浦さんの演出はキツかったですけど・・・」と、心の声をもらしていた。
それに対し、三浦監督は「松坂さんも大変だったと思いますが、スタッフも大変だったと心から思います。まぁ、僕のせいではあるんですけど(笑)、その苦労がスクリーンに刻まれていると思います」と、手応えは感じている様子だった。
さらに、松坂は三浦監督の演出について「皆さんのクランクイン前にリハーサルできたのは大きかったですね」と振り返ると、「撮影中は「明日、休みになんねーかなー」って思ったり、「三浦さん、風邪ひかねーかなー」って思ったりもしました(笑)。三浦さん、本当に風邪をひいたことがあったんですが、それでも現場に来ていたので、この人は無敵だなと思いましたね」と、三浦監督のみなぎるパワーにはもはやお手上げ状態だった。
そんな松坂について、耳が聞こえない謎の女性【咲良】役を務めた冨手麻妙は「私は順撮りで、出会いのシーンを撮り終えた後、最後のシーンは最終日に撮ったんですが、松坂さんに久しぶりにお会いしたら、領君として以前とは違う人間になってたんですよね。役者としてさすがだなと思いましたし、尊敬しました」と絶賛。続けて「大変な撮影だったのに、バナナ一本しか食べてなかったんです。体力あるなぁって思ってました(笑)」と、現場での松坂の様子を明かすと、「バナナ一本で集中できるんですよね。別に好きじゃないんですけど(笑)」と打ち明ける松坂だった。
そこに関しては、OL【イツキ】役の馬渕英俚可も「私も松坂さんはご飯食べないのかなぁって見てました(笑)」と同調しながら、「あと、寒い時期の撮影だったんですけど、『俺はいいです』って言ってベンチコートを一切着なかったんですよね。あれは自分を追い詰めてたんですか? 何なんですか?」と松坂を問い詰めると、「何なんですかねぇ(笑)」と笑顔を浮かべながら、松坂は「すぐ脱ぐしと思ってたからじゃないですかね? 気合いを入れてたんだと思います」と回答していた。
最後に、松坂は「今まで携わってきた作品の中で、こんなにも入口と出口が違う作品はなかったですし、何より余韻を楽しめる作品だと思います。観終わった後は面食らうかもしれませんが、劇場を出る頃には軽やかな会話が繰り広げられていると思います」と締めくくった。
舞台挨拶にはその他、出演の真飛聖、猪塚健太、桜井ユキ、小柳友、荻野友里、佐々木心音、大谷麻衣、西岡德馬、江波杏子が登壇した。
映画『娼年』(ファントム・フィルム配給)
映画『娼年』(ファントム・フィルム配給)は、「娼夫」として生きる男を主人公に、性の極限を描き上げた石田衣良による同名小説を、2015年に上演した舞台版の三浦大輔監督×松坂桃李主演コンビで新たに映画化した作品。
監督・脚本:三浦大輔 出演:松坂桃李、真飛聖、冨手麻妙、猪塚健太、桜井ユキ、小柳友、馬渕英俚可、荻野友里、佐々木心音、大谷麻衣、階戸瑠李、西岡德馬、江波杏子 ほか