コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第129回
俳優の菅田将暉が、8月27日に丸の内ピカデリー1で行われた、映画『あゝ、荒野』の完成披露上映会舞台挨拶に登壇した。
本作でW主演を果たした、【新宿新次】役の菅田将暉と、【バリカン】役のヤン・イクチュン。 舞台挨拶が始まると、ステージに設置された[孤独をぶち破れ]と書かれたパネルを、文字通りぶち破って勢いよく飛び出してくるはずの2人だったが、なかなか上手いこと割れずに、役から離れたことで自身の力が衰えていることを嘆く菅田の姿があった。
作中では、それぞれに思いを抱えながらボクシングに打ち込む2人の様子が描かれているが、役作りに関して菅田は「最初は、僕が50何kg、ヤンさんが70何kgと、20kgくらいの体重差があったので、僕が増量して、ヤンさんが減量して、同じくらいにしていったんです」と振り返ると、さらに「それぞれの国でトレーニングをして、半年後に初めて会うことになるんですけど、スパーリングしたり、叫んでるヤンさんの映像を見せてもらった時は、『息もできない』の怖い人が出てきた! って、俺も頑張んなきゃと思いました(笑)」と、ヤンが過去に演じた“怖い役”を想像し気が引き締まる思いがした菅田だった。
対して、ヤンも「菅田さんがボクシングを練習している映像を見てから、自分もそれにレベルを合わせなきゃと緊張してました」と、場所は離れていようとも同じ思いを抱いていたことを明かしていた。
そんな2人を本物のボクサーに育てる鬼のトレーナーとして存在していたのが、【馬場】役のでんでん。 だがしかし、若いモンには負けられないという気持ちが強すぎたのか、初日の撮影で気合いを入れすぎて、親指をつき指してしまったらしく、その後の撮影では“ジャブしか受けない”ことで強引に乗り切っていたようだ。
その姿に菅田も「でんでんさんが現場に来てから緊張感が増して、士気が上がりました」と口にすると、ヤンも「でんでんさんはボクサーではなく超人を育てるトレーナーです」と感服していたのだった。
舞台挨拶にはその他、岸善幸監督、出演の木下あかり、モロ師岡、今野杏南、山田裕貴、木村多江、ユースケ・サンタマリアが登壇した。
映画『あゝ、荒野』(スターサンズ配給)
映画『あゝ、荒野』(スターサンズ配給)は、寺山修司が遺した唯一の長編小説「あゝ、荒野」を、菅田将暉とヤン・イクチュンを主演に迎え、二部作で実写映画化した作品。
監督:岸善幸 脚本:港岳彦、岸善幸 出演:菅田将暉、ヤン・イクチュン、木下あかり、モロ師岡、高橋和也、今野杏南、山田裕貴、河井青葉、前原滉、萩原利久、小林且弥、川口覚、山本浩司、鈴木卓爾、山中崇、でんでん、木村多江、ユースケ・サンタマリア ほか