コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第100回
女優の大竹しのぶが、6月22日に六本木ヒルズアリーナで行われた、映画『メアリと魔女の花』のスペシャルトークイベントに出席した。
本作は、2014年末にスタジオジブリを退社した西村義明プロデューサーが、2015年4月15日に設立したアニメーション制作会社「スタジオポノック」の第1弾作品であり、スタジオジブリで『借りぐらしのアリエッティ』と『思い出のマーニー』の2作品を手掛けてきた米林宏昌監督にとっても、ジブリ退社後初の長編アニメーション作品となった。
米林監督は「『思い出のマーニー』を作った後にもう一本、『思い出のマーニー』とは真逆の動くファンタジー作品を作りたいと、西村プロデューサーと話して今日まで一生懸命やってきました。本当にゼロから、西村プロデューサーと喫茶店を巡りながら脚本を練っていたので、今日この場に立てていることが夢のようです」と、胸の内を明かしていた。
西村プロデューサーは「米林監督も僕もポノックのクリエイターたちも、みんなジブリが大好きで、ジブリに入ったので、ジブリのクオリティというものをよく知っていましたし、それをゼロから再構築していくのはとても大変でした。観客の皆さんが満足のいくクオリティに持っていくまで、一日一日もがきながら作っていったので、今はよく完成したなぁという思いです」と、感慨深く語っていた。
また、西村プロデューサーは「ジブリは価値あるものを作る集団で、愚直さというものがジブリの志なので、それを現場でも共有してきました。そして、米林監督にとっては3本目の勝負の作品です。でも、ジブリの蓋が外れて、やりたいことを全部詰め込んでいたと思います」と、本作に対する米林監督の手腕を讃えていた。
そんな彼らの熱い想いが込められた本作に魅了されたのが、声優キャストの一人、【シャーロット】役を務めた大竹だった。
大竹は「『借りぐらしのアリエッティ』の時も思ったんですが、もしかしたらこういう世界が本当にあるのかもと思わせてくれるというか、もしかしたら魔法ができるんじゃないかと思うくらい、画の美しさに引き込まれました」と、少女のように目を輝かせていた。
さらに、その魔法に関して「色々な魔法を使いたい」と切望していた大竹は、妄想の世界、想像の世界が大好きなようで、「小さい頃、学校の朝礼の時間が退屈で、“髪の毛をいじっていたら金髪を見つけて「私、フランス人だわ!」”って思ったりしながら想像の世界で生きてました(笑)」と、当時を振り返っていた。
なお、西村プロデューサーと米林監督にとって忘れてはならないのが、宮崎駿監督、高畑勲監督、鈴木敏夫プロデューサーの御三方。
西村プロデューサーは「米林監督と僕でスタジオジブリに行き、完成した作品を高畑監督と鈴木プロデューサーに観てもらいました。宮崎監督は『俺は観ない』って言って観てくれなかったんですが(笑)、『よく頑張った』という労いの言葉を頂きましたし、作品を観た後に、鈴木プロデューサーからも『ジブリの呪縛から解き放たれると、こういう作品が作れるのかぁ』という感想を頂きました」と、“古巣”からの温かい言葉に感謝の念を抱いていたのだった。
イベントにはその他、声優キャストの杉咲花(メアリ役)、神木隆之介(ピーター役)、小日向文世(ドクター・デイ役)、佐藤二朗(フラナガン役)、遠藤憲一(ゼベディ役)が出席した。
映画『メアリと魔女の花』(東宝配給)
映画『メアリと魔女の花』(東宝配給)は、英作家メアリー・スチュアートによる児童文学「The Little Broomstick」を、『借りぐらしのアリエッティ』の米林宏昌監督が映画化した、【スタジオポノック】の長編第1弾作品となるファンタジー・アニメーション。
監督:米林宏昌 脚本:坂口理子、米林宏昌 声の出演:杉咲花、神木隆之介、天海祐希、小日向文世、満島ひかり、佐藤二朗、遠藤憲一、渡辺えり、大竹しのぶ ほか