コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第83回
女優の森川葵が、5月29日に有楽町朝日ホールで行われた、映画『花戦さ』の完成披露上映会舞台挨拶に登壇した。
本作でヒロイン【れん】を演じた森川は、そうそうたる共演者の顔ぶれに恐縮し、壇上でも「緊張してます」「お腹が痛いです」と、ヘロヘロ状態だった。
舞台挨拶前に行われた記者会見でも「生け花の稽古をし、花の力を感じた」としながらも、「皆さん個性を持たれた素敵な俳優さんたちばかりなので、その中に自分が紛れているのが不思議な感覚です」と語るなど、自分の居場所を見つけられないでいたようだ。
一方、主人公【池坊専好】役を務めた野村萬斎は「京都の撮影所に入ると、皆さん京都弁で話し始めるんですよね。ネイティブの人もいましたが、エセっぽい人もいました(笑)」と、撮影を振り返ると、共演の佐藤浩市については「映画で2回、ドラマで1回ご一緒していますが、いつも友情関係のある役で、今回もおもてなしで気持ち良くさせてもらいましたし、演技でも癒されました」と、絶大なる信頼を寄せていた。
その佐藤は本作で【千利休】役を務めており「今回はギラギラしていない佐藤浩市が見られると思います」と、おどけていたが、茶道の所作は大変だったらしく「何回か習いに行って、見てる方が違和感を感じないよう、滑らかな手の動きというものに気を付けました。でも、監督が手しか撮らないから吹き替えでもよかったんじゃないかなと思います(笑)」と吐露していた。
そして、【織田信長】役を務めた中井貴一は「撮影は2日間、シーンで言うと3シーンくらいで、最初と最後しか出ていないので、『中井貴一、出てなかったなぁ』と思った方は最初から寝てたんだと思います(笑)」と発言し、会場を笑わせていた。
最後に、野村萬斎は「この映画には日本の文化がたくさん詰まっています。これからの教科書というかスタンダードになるんじゃないかというくらい、文化の香りに満ちています。武力に対して芸術の力、文化の力がどれだけあるのか。今、ミサイルをどうこうしている人がいますけど、そういうことではなく、対話をするための一つのきっかけとして花やお茶、絵であるとか、そういう文化芸術があるということを描いています。観終わった後は清々しい気持ちになると思いますし、オリンピックの前に日本の力というものを感じてください」と、時事ネタを交えつつ、文化・芸術の大切さを訴えていたのだった。
舞台挨拶にはその他、篠原哲雄監督、出演の佐々木蔵之介、山内圭哉、和田正人、吉田栄作が登壇したほか、高円宮妃久子殿下と絢子女王殿下も臨席した。
映画『花戦さ』(東映配給)
映画『花戦さ』(東映配給)は、戦国時代に実在した京都の花僧・池坊専好が、天下人である豊臣秀吉に単身立ち向かう姿を描いたエンタテインメント時代劇。
公式サイト http://www.hanaikusa.jp/