コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第72回
俳優の池松壮亮が、5月13日に新宿ピカデリーで行われた、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』の初日舞台挨拶に登壇した。
本作は、詩人・最果タヒ氏による同名詩集を基にした映画だが、2013年公開の『舟を編む』で日本アカデミー賞を受賞した石井裕也監督が手掛けた脚本について、池松は「本当に素晴らしくて、これは傑作になるなと思いました。初稿の段階で、もうペンを止めていいんじゃないかと思うくらい素晴らしかったです」と大絶賛。 さらに、最果氏の詩集についても「後付けになっちゃうんですが、詩集の言葉うんぬんよりも、書いた人の物語や、その奥にある社会とか今が映っていたので面白かったです」と、感想を口にしていた。
なお、池松とともに主演を務めたのが、俳優・石橋凌と女優・原田美枝子の次女であり、本作が映画初主演となった石橋静河。
慣れない舞台挨拶に終始緊張した面持ちの石橋だったが、石井監督は「実力という意味では、池松壮亮という天才の足元にも及ばなかったですが、新人ということは圧倒的な魅力があるので、新人だからこその奇跡というものを起こしてくれました」と、温かいエールを送っていた。
しかし、池松は、石橋が演じた【美香】に対しては好印象を持っていたが、素の石橋についてはあまり知らないらしく、「石橋凌さんと原田美枝子さんの娘さんっていうくらいしか(笑)」と、3週間も現場で一緒だったにも関わらず、距離が近い関係にはなれなかったことを明かしていた。
その後、現場でのエピソードを聞かれた石橋だったが、「難しいですね。えーっと・・・」と、緊張からか何も思い出せず長い沈黙が続き会場も静まり返ってしまったが、すかさず石井監督が「初めてじゃないですか? 舞台挨拶でこれだけの沈黙は(笑)。大型新人が現れましたね」と、救いの手を差し伸べていたのだった。
最後に、池松は「昨今、色々な恋愛映画が作られていますが、そのどれにも属さない稀有な作品ができました。今をどう生きていくか、人と人とがどう繋がっていくのか、それをこの映画を通して僕らも探して、一つの答えを見つけることができたと思います」と、作品の出来に自信をのぞかせていた。
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(東京テアトル/リトルモア配給)は、詩人・最果タヒによる同名詩集を基に、都会の片隅で孤独を抱えて生きる、現代の若い男女の繊細な恋愛模様を描き出した作品。
5月13日(土)より、新宿ピカデリー、ユーロスペースで先行公開。