コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第62回
先日、中学生になったばかりの女優・芦田愛菜が、4月18日にTOHOシネマズ 新宿で行われた、映画『バーニング・オーシャン』の公開直前イベントに出席した。
受験勉強に専念した結果、東京都内の難関私立中学校に複数合格し、その中から、慶應義塾中等部を選択し入学した芦田だが、この日のイベントには奇しくも、慶應義塾大学卒のジャーナリスト、池上彰氏も参加した。
まずはじめに、池上氏が「石油をどのようにして取り出しているのか、それが分からなかった人も自然と分かるような仕掛けがされていて、映画の作りは上手いなぁと思いました。大きな災害がどのようにして起きたのかが身につまされて分かる映画です」と、本作の感想を述べると、芦田も「この事故は絶対に防げなかったことじゃないと思います。おかしいと思った時に、何か行動していたら変わっていたかもと思いながら観てました。“たぶん”大丈夫ではダメで、“絶対”大丈夫じゃないといけないんですよね」と、真っ直ぐな眼で語っていた。
と、ここから池上氏の特別講座が実施され、芦田は完全に聞き手まわっていたのだが、まさに石油のように、次から次へと湧き出てくる池上氏の豊富な知識に、「あ~、はい。あ~、はい」と、真剣な眼差しで聞きながら、その一つ一つの言葉を丁寧に汲み上げ、最後には「事故の背景だったり、その後の被害だったり、映画を観て疑問に思っていたことが、どんどんより深く分かったので、もう一度映画を観直したいです」と、さらなる知識を追い求めようとする芦田の姿が窺えた。
そんな芦田の姿に池上氏は「もっと知りたい光線を出してくるので、こういう生徒がいると、ついついノッちゃいますよね(笑)。素晴らしい聞き手です」と、まだまだ話したい願望を抑えきれない様子だった。
愛くるしい笑顔と大人顔負けの演技力で、天才子役と謳われていた芦田も、もう中学生。 女優としても、そして、人間としても、一歩一歩確実に成長している。 好奇心や探究心がなくならない限り、芦田愛菜の未来には無限の可能性が広がっている。
映画『バーニング・オーシャン』(KADOKAWA配給)
映画『バーニング・オーシャン』(KADOKAWA配給)は、石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」で2010年に、海底油田から逆流した天然ガスへの引火により大爆発を起こしたという実際の事故を題材にした作品。
公式サイト http://burningocean.jp/