Mar 31, 2017 news

武田梨奈が欲しいのはキックのキレより女性らしさ!?

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コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第52回

『ゴースト・イン・ザ・シェル』の顔面ハッキングイベントが3月30日、ニッショーホールで行われた。 イベントには、“革命戦士”ことプロレスラーの長州力と、女優の武田梨奈が出席した。

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【清く正しく美しく】

決して宝塚歌劇団のことではなく、武田梨奈という女性を表すのに相応しい言葉である。 一本筋の通った彼女の立ち居振る舞いにはいつも感服し、こちらも襟を正さなければという気持ちにさせてくれる。

以前、『海すずめ』(2016年公開)という映画のイベントにおいて、会場に集まった観客からサプライズで誕生日をお祝いされると感激の表情を浮かべ、イベントが終了し一度舞台裏にハケた後も、再びステージに戻ってきた武田はマイクを手にし、深々と頭を下げながら、改めて観客に対し感謝の言葉を述べていた。その清々しい姿が今も思い出される。

空手の大会で敗北を喫した父親の仇を取る。そのために、心も身体も防具で固める決意をしたのが、武田梨奈10歳の時であった。 空手家となった武田の躍進はとどまるところを知らず、琉球少年流空手月心会の黒帯二段を所有し、数々の大会で優勝するなど、これまでに輝かしい実績を残してきた。

そんな武田に転機が訪れたのは2008年。 空手の道場を訪ねてきた、映画プロデューサーであり映画監督の西冬彦氏の目に留まり、映画『ハイキック・ガール!』のオーディションへの参加を勧められると、それに見事合格。同作で映画初主演を果たすこととなった。 以降も、『KG カラテガール』や『デッド寿司』などの映画でも主演を務め、その突きや蹴りの“本物さ”は、日本を飛び出し世界へと発信されるようになっていった。

一方、日本において武田の名が広く知られるようになったのは、やはり「セゾンカード」のCMで、頭突きによる瓦割りを披露したのがきっかけだろう。あのCMはインパクト大であった。 それを裏付けるように、その年(2014年)だけで、イベントなどで300枚以上の瓦を割ったと武田本人も口にしている。

これまで魅せてきた武田のアクションというのは、単に“空手家”としての自分を表現しただけではなく、6歳の頃から目指していたという、“女優”としての自分を表現するための渾身の演技であったのかもしれない。

また、武田は得意のアクションを封印し、『祖谷物語 おくのひと』(2014年)、『木屋町DARUMA』(2015年)、『かぐらめ』(同)、そして前述の『海すずめ』などの映画や、TVドラマ『ワカコ酒』に出演。高い演技力も披露し、特に『木屋町DARUMA』では、主演の遠藤憲一を相手に文字通り身体を張り、その根性を見せつけた。

なお、『ワカコ酒』に至っては、4月7日よりSeason3が放送されるなど、今や人気のシリーズと化している。

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ただし、そんな武田にも苦手なものがあるという。 それは、“女性らしさ”を表現することのようだ。

「相手に隙を見せたくないんです」 「不安に打ち勝つには、不安に対して真っ正面からぶつかっていく。それが私のやり方です」 「家ではほぼ全裸なんです」

10歳の時に、心と身体にガッチリと防具を身に付けてから、まさに男らしく、いや、漢(おとこ)らしくすくすくと育ってきてしまった武田。

女性らしさを身に付けていきたいならば、前に突き出した正拳を今度は己に向けて放ち、身に付けた“漢らしさ”という防具を少しずつ壊していかなければならない。

女子力をアップさせるには、たまには隙を見せることも大切だろうし、女優としての深みを出すには、裸のままの自分を全てさらけ出すのではなく、多少はミステリアスな部分も持つことが重要かと思われる。 『ゴースト・イン・ザ・シェル』に例えて言うならば、生身の部分に多少の義体化を施す、そんな具合か。

今回のイベントでも、『ハッキングして顔を変えられるなら誰になりたい?』の質問に、間髪を容れず「間違いなくスカーレット・ヨハンソンさんですね私は。この顔になれたら他に何もいらないです」と、強くて美しくて、そして“セクシー”なスカーレットに、女性としての強い憧れの気持ちを抱いていた武田だった。

ただ、先日閉幕した、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017」には審査員として参加していた武田。 日本映画界でもアクションをこなせる女優の数が増えつつある中で、武田は「私ができるのは体を張ったアクションやスタント。他の女優さんができないことをどんどんやりたい」と、オンリーワンをアピールすると、「近々、海外にも飛び出したい」と、アクション女優としてさらなる高みを目指している武田でもあった。

う〜ん、実に漢らしい。

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ちなみに、この日のイベントでは、【バトー】に扮した長州力に対して、ミドルとハイに強烈なキックをお見舞いした武田。長州からも「すごいキレてる。いやぁキレてましたよぉ」と言わしめるほどに、キックのキレが抜群な武田なのであった。

う〜ん、実に漢らしい。

映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』(東和ピクチャーズ配給)

映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』(東和ピクチャーズ配給)は、士郎正宗による大人気コミックを押井守監督が映画化した、SFアニメの傑作『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』を、ハリウッドで実写映画化した作品。

監督:ルパート・サンダース
脚本:ジェイミー・モス、ウィリアム・ウィーラー、アーレン・クルーガー
出演:スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、マイケル・ピット、ピルー・アスベック、チン・ハン、ジュリエット・ビノシュ、桃井かおり、福島リラ、山本花織、泉原豊 ほか

佐々木誠

「日刊 情報プレス」編集者 (有)情報プレス社が発行する「日刊 情報プレス」は、映画業界のニュースやイベント、興行成績、劇場公開情報など、映画に関する様々な情報を掲載。また、Facebookページでは、【情報プレスα】(www.facebook.com/joho.press.jp)として、映画の舞台挨拶やイベントの模様を面白可笑しく掲載中。日々アップしている。