コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第39回
本作は、作家・秋吉理香子による、イヤミス、つまり、“読んで嫌な気分になる”ミステリー小説を、清水富美加と飯豊まりえのダブル主演で映画化した作品。 周知の通り、“家”を出てしまった清水のこともあり、映画の完成披露という晴れの舞台でも飯豊が涙する場面も見られるなど、いつもとは違った空気が会場には流れていたのだが、一人だけいつも通り変わらなかった人物がいた。
清野菜名である。
作品の中では、秘密を抱えながらもいつも笑顔で自分を偽っている女の子【高岡志夜】を演じている清野だが、この日の舞台挨拶では、暗黒とは程遠く、おそらく秘密は抱えてはいないであろう天真爛漫な笑顔と、天然な発言で場を和ませていた。
清野は、飯豊について聞かれるも話を聞いてなかったらしく、「楽しかったです」と、見当違いな答えを返したり、あるいは、飯豊が共演の玉城ティナの“美”について語ると、「ティナちゃんの美意識が高すぎて。私なんて膝を見たらカッサカサでした(笑)。コンビニでボディクリームを買って塗ってましたよ(笑)」と、開けっぴろげに告白。さらに、自身の暗黒な部分に関しては、「人の話を聞いてなかったりとか(笑)」と、自覚はしていたが、「インスタ(Instagram)に良い写真を載せたいと思って、一番脚が細くて長く見える写真を載せてます」と、再び天然な、いや、純粋とも言うべき発言を繰り返していた。 この短い間だけでも、彼女の人柄というものを窺い知ることができた。
清野は、自身の性格を「“超”明るくて、“ちょっと”負けず嫌い」と語っている。
高校時代は、アクション部に3年間所属し、その中で本格的なアクションの訓練を受けていたくらいのツワモノでもある。 2014年公開の映画『TOKYO TRIBE』(園子温監督)では、1回目のオーディションで落とされるも、2回目のアクション審査で合格し、見事ヒロインの座を勝ち取ったほど。 そして、翌2015年公開の『東京無国籍少女』で映画初主演を果たすと、得意のアクションを駆使してスクリーンの中を所狭しと駆け回り、その強くて美しい姿で観る者を魅了した。
そんなアクションで鍛えられた精神力の賜物なのだろうか。『TOKYO TRIBE』の舞台挨拶に登壇した際も、突然のフリにも関わらず、鈴木亮平やYOUNG DAISらとともに、赤面しながらも生ラップを披露。その男勝りの根性に会場から拍手喝采を浴びていた。 この時は、そのあどけない笑顔の裏に隠された、“ちょっと”ではない、熱き負けず嫌いの炎を感じ取ることができた。
最近では“動き”を封印し、本格的な女優としての活躍が目立つようになってきた清野だが、彼女には、ハイキックガール武田梨奈とともに、日本を代表するアクション女優として、その名を世界に轟かせていってもらいたいものだ。
映画『暗黒女子』(東映/ショウゲート配給)
映画『暗黒女子』(東映/ショウゲート配給)は、聖母マリア女子高等学院で、経営者の娘にして全校生徒の憧れの存在だった女子が、校舎の屋上から謎の転落死を遂げたことから物語が始まる、秋吉理香子による同名小説を映画化したミステリー作品。
公式サイト http://ankoku-movie.jp/