コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第20回
『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』の初日舞台挨拶が12月17日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた。 舞台挨拶には、製作総指揮&原案&脚本の日野晃博氏、声優キャストの小桜エツコ、実写パートに出演の南出凌嘉、浜辺美波、遠藤憲一、山﨑賢人、斎藤工、武井咲が登壇した。
また、『うさぎ追いし 山極勝三郎物語』の初日舞台挨拶が同日、有楽町スバル座で行われた。 舞台挨拶には、近藤明男監督、出演の遠藤憲一、水野真紀、高橋惠子、岡部尚、森日菜美、秋月成美、尾崎右宗、緒方美穂が登壇した。
お気付きの方も多いだろう。
作品のテイストは全くもって違うが、両方の作品に出演している俳優が一人いる。 そう、エンケンこと、遠藤憲一だ。
アニメパートと実写パートを融合させて描くという初の試みとなった、今回の『映画 妖怪ウォッチ』シリーズ第3弾で、見た目からしてヤバすぎる【じんめん犬】を演じている遠藤。
舞台挨拶では、「じんめん犬のメイクをすると、ケータが人懐っこくベタベタくっついてきたんだけど、素顔で会ったら全然寄り付かないんだよ(笑)」と、自身のコワモテ具合を嘆くと、その【天野ケータ】役を務めた南出凌嘉から「遠藤さんの素顔を見てビックリしました」と、追い打ちをかけられ、さらに落ち込んでいた遠藤だった。
遠藤演じる【じんめん犬】は、11歳の南出にとってだけではなく、大人チームにとっても衝撃だったらしく、【木下紗枝】役を務めた武井咲は「やっぱり、遠藤さんのじんめん犬が一番印象に残ってますね(笑)。衝撃でした。パンチが忘れられないです」と、すでにトラウマ状態になっていることを明かすと、同じく【ぬらりひょん】役を務めた斎藤工も「じんめん犬を見た時は、鼻から春雨が出そうになりました。遠藤さんのエネルギーは圧巻でしたね。憧れました」と、もはや印象に残るなんていうレベルではなく、憧れの対象へと変化していったのだった。
一方、『うさぎ追いし』では、世界で初めて人工的なガンの発生実験を成功させ、ノーベル医学生理学賞候補にもなった、実在の人物【山極勝三郎】の生涯を演じている遠藤。
この日は、舞台挨拶の掛け持ちとなった遠藤だが、『うさぎ追いし』の壇上では「妖怪役から人間役に戻ってきました(笑)」と、やはり『妖怪ウォッチ』のことにも触れ、会場の笑いを誘っていたのだが、早朝から並んでくれたお客さんや、満席立ち見まで出る盛況ぶりに対し、「なかなか感極まることはないんですが・・・」と、“人間らしく”瞳を潤ませる姿も見られた。
じんめん犬からノーベル賞候補の偉人まで。 いやはや、役の振り幅がスゴすぎる。
まだ「モテモテ」ではなく、「コワモテ」の時代には、その風体を生かし、特にVシネマを中心に、チンピラやヤクザの組長などを演じ、“怖い顔”、“恐ろしい人”を印象付け、主に極道モノに多数出演していたが、実際のところ本人によれば、ピストルの発砲音は音がデカくて怖いので苦手らしい。以前、何かのテレビ番組でそう語っていたのを覚えている。
また、その低く渋い声を活かして、声優やナレーターとしても活躍している。“顔”だけではなかなか食べていけない時期に、“声”で生計を立てていたようだ。数多く手掛けているのが、映画の予告編やテレビ番組で流れるナレーション。 「どんなナレーション?」とすぐに思いつかない方のために、わかりやすい例をお伝えしよう。 それは、ダウンタウンの松本人志がチェアマンを務める大喜利No.1決定戦『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)のナレーションの声。「いっぽ〜ん!」と言う、あの声だ。
“見た目は怖いけど中身は小心” “見た目は怖いけど中身は三枚目”
という、遠藤の正体が世間に認知され始めると、仕事の量が一気に倍増。今や、サスペンスからコメディ、ラブストーリーまで、あらゆるジャンルをこなし、映画やドラマには欠かすことのできない名バイプレイヤーとなっている。
「コワモテ」の時代から、今度は「モテモテ」の時代が到来。 まさしく、エンケン劇場の幕開けである。
『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』(東宝配給)
『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』(東宝配給)は、シリーズ初となる、アニメパートと実写パートを交えながら、ケータやジバニャンたちの新たな冒険を描いた、『映画 妖怪ウォッチ』第3弾作品。
監督:ウシロシンジ、横井健治(実写パート) 脚本:日野晃博、加藤陽一 声の出演:戸松遥、関智一、小桜エツコ、遠藤綾、重本ことり、梶裕貴、潘めぐみ ほか 出演:南出凌嘉、浜辺美波、黒島結菜、澤部佑(ハライチ)、遠藤憲一、山﨑賢人、斎藤工、武井咲 ほか
公式サイト http://www.eiga-yokai.jp/
『うさぎ追いし 山極勝三郎物語』(新日本映画社配給)
『うさぎ追いし 山極勝三郎物語』(新日本映画社配給)は、大正時代の初期に、世界で初めて人工的なガンの発生実験を成功させ、ノーベル医学生理学賞候補にもなった、山極勝三郎の生涯を描いたヒューマン・ドラマ。
監督:近藤明男 脚本:篠原高志 出演:遠藤憲一、水野真紀、豊原功補、岡部尚、高橋惠子、北大路欣也、三上寛、森日菜美、白川和子、秋月成美、尾崎右宗、横光克彦、緒方美穂、古今亭文菊 ほか
公式サイト http://usagioishi.jp/