コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第3回
映画『カノン』の完成披露試写会舞台挨拶が14日、東京の神楽座で行われた。舞台挨拶には、雑賀俊郎監督、出演の比嘉愛未、ミムラ、佐々木希、鈴木保奈美が登壇した。
佐々木希は“べっぴん”であるが “すっぴん”であるという問題
「そうなんですかねぇ……」
自身が出演した、映画『カノン』の完成披露試写会舞台挨拶に登壇した佐々木希は、「甘え上手」であることを指摘されると、照れながらこう返答した。
本作では、長女のミムラ、次女の比嘉愛未とともに、三女を演じている佐々木だが、実生活でも三兄妹の末っ子のようで、「(ミムラと比嘉の)2人に頼った部分がある」、「ピアノも、(練習期間が)1ヶ月もあったら大丈夫、かなり楽勝と思ったが、段々ヤバくなった」と撮影を振り返るなど、その根っからの甘えん坊っぷりは否めなかった。
【秋田美人】という言葉は彼女のためにあるんじゃないか? そんなことまで思わせてしまうくらい、モデルとして世に登場し始めてから、誰もが(特に男性は)その“べっぴん”ぶりに魅了されてきたが、今や活躍の場はモデル業だけに留まらず、女優としても名を連ねることが多くなった。
しかし、[演者・佐々木希]としての評価はどうか。
これまでの【綺麗なお姉さん】というイメージからの脱却を図りたいがためか、近年では化粧も薄くして、汚れ役や悪女を演じることが増えてきた佐々木。しかしどの役を見ても、正直、その差はわずかなものにしか感じず、ほぼノーメイクの“すっぴん”状態であることが多い。
「目鼻立ちが整ったお人形さんのよう」
女性ならば一度は言われてみたい言葉だろうが、女優という職業を選んだからには、その人形に“役”というメイクを施さなければならない。
映画の“母親役”をベースに 多彩な表情を見せた鈴木保奈美
同じく、この舞台挨拶に登壇した鈴木保奈美は、三姉妹の母親を演じているわけだが、壇上で3人を見守る姿はまさに、厳しくもあり、優しくもある、母そのものだった。
美人三姉妹の母親役を演じたことについて聞かれると、「それは私から生まれてきたからです!(笑)」と、キリッとした表情で胸を張っていたかと思えば、「撮影現場では3人が仲が良くて、健やかに、美しく、キラキラ楽しそうにしてるのが羨ましかったです。四姉妹にしてほしかった」と、今度は少女のような可愛らしい一面を見せるなど、ステージ上でも、“すっぴん”ではなく、まさしく、“役”を演じている鈴木保奈美の姿が、そこにはあったのだった。
佐々木希にこれから必要なこと。
それは、メイクを落として“すっぴん”で勝負することではなく、まずはその前に、様々な役柄と向き合い、メイクを塗り重ねていくことによって、どんな役でも演じられるような“厚化粧”の女優になることだろう。
……とは言っても、化粧の厚さの話をしている訳ではない。
鈴木保奈美が今回舞台上で見せたさまざまな”顔”は、 これまでのキャリアで積み重ねてきたもので、 それはきっとメイクではなく、納得がいくまで役を追求したテイクの数なのだ。
ちなみに、鈴木保奈美は実生活でも三児の母であり、次女の名前が【花音】というのも、本作と何か不思議な縁があるのかもしれない。 まぁ、読み方は“かおん”というらしいのだが。
映画『カノン』(KADOKAWA配給)
映画『カノン』(KADOKAWA配給)は、母へのわだかまりを抱えたまま大人になった三姉妹が、母の過去を辿りながら、自分たちの傷と向き合う姿を描いたドラマ。
監督:雑賀俊郎 脚本:登坂恵里香 出演:比嘉愛未、ミムラ、佐々木希、桐山漣、長谷川朝晴、古村比呂、島田陽子、多岐川裕美、鈴木保奈美 ほか