Mar 21, 2025 news

第3回新潟国際アニメーション映画祭が閉幕 長編コンペティション部門グランプリは『ルックバック』

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<長編コンペティション部門 受賞結果>

■グランプリ
『ルックバック』 監督:押山清高

©藤本タツキ/集英社 ©2024「ルックバック」製作委員会

▼マヌエル・クリストバル審査員長 コメント
完璧なテンポと美しくレンダリングされたキャラクターたち。テーマの中にも、作り手にも新たな発見がある映画だ。この作品の技術、ストーリーテリング、そして成熟度を高く評価したい。この新鮮で、かつエキサイティングな監督の新作に期待が高まる。

▼押山清高監督 受賞コメント
本当に多くのアニメーター、多くのスタッフに支えられてできた映画です。近年、AIでアニメーションが作れる時代になっていくだろうというニュースをまさに『ルックバック』を作っている最中に見ました。日本のアニメ業界は、多くのクリエイター集団が日々切磋琢磨して作り上げてきたその技術力を共有し合いながら作品を生み出しています。たぶん今後こういう技術の継承みたいなものは、これまでのような形では生き残ることが難しくなるのかもしれない。『ルックバック』のように隅々まで人の手で作り上げるということは、これからの時代ますます難しくなっていくだろうという思いもあって、この作品は僕の中でも、今の時点での記念碑のような気持ちで作っていました。人の手によって生み出されるプロセス、ヒストリーなどの価値は今後ますます高まっていくだろうと思っていますので、僕もアニメをこのままなるべく長く作り続けられるといいなと思っています。


■傾奇賞
『かたつむりのメモワール』 監督:アダム・エリオット

© Arenamedia Pty Ltd.

▼マヌエル・クリストバル審査員長 コメント
感傷に流されることなく、繊細さと共感をもって、虐待され見捨てられた二人の子どもの物語に挑んだ見事なストーリーテリング。精緻な技巧と細部へのこだわりが光る本作で、エリオット監督は力強く心を揺さぶるアニメーション寓話を生み出した。

▼アダム・エリオット監督 受賞コメント
この作品は制作に8年かかりました。過去10ヶ月、いろんな国や地域を回ってこの作品のプロモーションを続けてきました。今回が最後の映画祭にもなるので、このような形で自分の冒険を終えられたことをものすごく嬉しく思っております。この10ヶ月、いろんなところでストーリーテリングの重要さ、インディペンデントアニメーションの重要さというものを語ってきました。今アニメーション業界は脅威にさらされています。一番大きな脅威と言えるのはAIだと思いますが、私の作品の一番最後に入れている言葉が“この作品は人間の手によって作られました”という文字です。一番いいストーリー、一番いい芸術というのは人間にしか作れないと思っています。この映画祭を通して新しい若いフィルムメーカーや学生たちがどんどん作品を作り続けてくれるのでは、という希望を抱いていますし、私たち全員が団結すればアニメーション業界も強くなるかなと思っているので、強くなって喜びや心の安堵を与えられるような作品をみんなで作り続けていきたいです。


■境界賞
『バレンティス』 監督:ジョヴァンニ・コロンブ

▼クリスティン・パヌシュカ審査員 コメント
この美しくも先見的な作品は、圧巻の音響設計とともに、精緻なグラフィック表現とともに、観る者を悲劇的な物語の世界へといざない、唯一無二の映像体験を生み出している。この独創的な映画は、大胆で、勇敢で、獰猛であり、『バレンティス』が世界中で発見され、称賛されることを願っている。

▼ジョヴァンニ・コロンブ監督 受賞コメント
とても嬉しく思っています。本当に皆さんありがとうございます。素晴らしい映画祭に来て、素晴らしい街を見て、街のいろんな優しい人たちと会って、貴重な体験で嬉しくてしょうがない気持ちです。


■奨励賞
『ペーパーカット:インディー作家の僕の人生』 監督:エリック・パワー

▼松本紀子審査員 コメント
インディペンデント・アニメーション制作の奮闘を、観客と共有する実に魅力的な旅を味わえる作品。この誠実で温かみのある作品は、エリック・パワーの3人の息子たち、そして彼と共にアニメーション制作という素晴らしい道を歩んできた私たち全員にとって大切な、次世代に受け継がれるものとなるだろう。

▼エリック・パワー監督 受賞コメント
この作品は一人のアーティストとしてどのような過程を経ないといけなかったかという、アニメーターとしての苦戦を描いたものです。こちらの映画祭ではアニメーションキャンプも行っているので、若い人々に今後も制作を続けていく活力を与えられていればいいなと思いますし、私自身の作品も若い方々のインスピレーションになっていればいいなと思います。もちろんこの道はものすごく辛いものであり、いろんな人から却下されるようなこともありますが、たまに今日のように勝利を勝ち取ることもできます。ありがとうございました!