Oct 27, 2022 news

香川照之は顔全体が可動域!? 監督ティーチイン付き特別試写会レポート 映画『宮松と山下』

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―― 香川さんを主演にしたことで良かった点や現場での変化はありましたか?

 とにかく顔の演技が想像していたよりも豊かで凄かったです。特に終盤のシーンの表情の使い方が、顔全体が可動域というかどこまででも細かく顔を自在に動かせるんだなと思いました。この作品は台詞が少ないですが、演技力に支えられた、良い表情のカットが沢山ありました。今まで芝居を技術でやっていると言われてもピンと来ていなかったんですが、香川さんを見ているとものすごい技術によって役の感情を表現しているんだなと思ったのが一番の体験でした。

佐藤 僕も顔の部分ですね。宮松が笑顔で振り向く1発OKのシーンがあるのですが、凄いなと思いました。「なんでこんな表情ができるんですか? 何かを思い出してるんですか?」と聞いても「違います」と言われ、結局教えてくれなかったのです。また谷(尾美)とのシーンで太陽がカンカン照りだった時が何度かあったのですが、香川さんは撮影直前までギラギラの太陽を覗いていて、僕は大丈夫かと心配していたのですが、撮影が始まると表情が元に戻ってるんです。これも気になって「なんでギラギラの太陽を見てるんですか?」と聞いたら「目を焼くんです」と香川さんは答えました。どうやら目を焼いて眩しいところで瞳孔を閉じると、本番中でも眩しい表情をせずに普通の演技ができるそうなんです。豊かな表情というのは技術があるんですね。

平瀬 私は、宮松がどういう人物なのかを香川さんと一緒に考えて、4人で議論する場面が多かったことが印象深かったです。特に現場で感動したのが、予告でも使用されている笑顔のシーンです。そのシーンをどう撮るか、分からないまま現場に入ったんです。香川さんもずっと悩まれていたと思うのですが、そのシーンを撮る前にこれはどうですか?と香川さんがやってくれたのですが、スタッフ全員がこれだ! となったとき、衝撃がありました。何か言われて演じるというよりは、一緒に考えてくださるので、良いシーンが撮れた。香川さんにお願いしてよかったです。

―― 映画の中で宮松はエキストラについて「1日に4回死んだこともある」と語りますが、宮松はこの映画の撮影で何回死んだのでしょうか? なぜ死ぬシーンがあるのかということを教えてください。

 数えたことなかったですね(笑) 編集してカットしたのも含めるとかなり死んでると思います。死ぬシーンについては、エキストラが同じことを繰り返すと考えたときに、「死ぬ」と「生き返る」が一番わかりやすく面白い、と思ったことと、死ぬ現象そのものが映像として、表現として強くて撮影の描写として面白いと思い取り入れました。

質問はまだまだ尽きず、時間が足りない状態だったが、各監督より来場の観客の皆さんに一言ずつのご挨拶で会場を締めて、ティーチインイベントは終了となった。

この日、ティーチインの終わりに解禁となった、キャストがカメラ目線でタイトルを連呼する予告映像というアイディアの発端について、佐藤雅彦監督は「これだけ世界観のある作品なので、何かできないかと思い、各シーンで“宮松と山下”というタイトルを言ってもらうのはどうかと考えました。香川さんにも相談してそれは面白いと乗ってくださり撮ることにしたのです。香川さんは他のキャストの方に“ここはフランス語みたいに発音すればいいんだよ”など演技指導もしてくれて、スタッフキャスト共にこのタイトルの連呼を撮るのが現場での楽しみになっていきました。」と語った。

映画『宮松と山下』は、11月18日(金)より新宿武蔵野館、渋谷シネクイント、シネスイッチ銀座ほか全国公開。

作品情報
映画『宮松と山下』

宮松はエキストラ俳優。ある日は時代劇で弓矢に打たれ、ある日は大勢のヤクザのひとりとして路上で撃たれ、またある日はヒットマンの凶弾に倒れ‥‥来る日も来る日も死に続けている。真面目に殺され続ける宮松の生活は、派手さはないけれども慎ましく静かな日々。そんな宮松だが、実は彼には過去の記憶がなかった。なにが好きだったのか、どこで何をしていたのか、自分が何者だったのか。なにも思い出せない中、彼は毎日数ページだけ渡される「主人公ではない人生」を演じ続けるのだった‥‥。

監督・脚本・編集:関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦

出演:香川照之、津田寛治、尾美としのり、野波麻帆、大鶴義丹、尾上寛之、諏訪太郎、黒田大輔、中越典子

配給:ビターズ・エンド

©2022『宮松と山下』製作委員会

2022年11月18日(金) 新宿武蔵野館、渋谷シネクイント、シネスイッチ銀座ほか全国公開

公式サイト bitters.co.jp/miyamatsu_yamashita