Oct 27, 2022 news

香川照之は顔全体が可動域!? 監督ティーチイン付き特別試写会レポート 映画『宮松と山下』

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“新しい手法が生む新しい映像体験”を標榜し、過去に2本の短編映画がカンヌ国際映画祭から正式招待を受けた監督集団「5月」が、名優・香川照之を主演に迎えた初の長編映画『宮松と山下』。

公開に先駆け10月26日(水)に都内で特別試写会が実施され、上映後のティーチインでは監督集団「5月」が撮影時のエピソードや主演の香川照之の魅力についてたっぷり語った。一足先に鑑賞した来場者からは「予想を裏切る展開から目が離せなかった!」「香川さんの抑えた演技が凄い!」と称賛の声が続々。

また監督が撮影中に撮り溜めたという、キャスト陣が各シーンで「宮松と山下!」とタイトルを連呼する予告映像もイベントで初上映。そのタイトル連呼予告映像30秒版もあわせて解禁された。

本編上映後、大きな拍手で迎えられた「5月」の佐藤雅彦監督、関友太郎監督、平瀬謙太朗監督。それぞれが一言ずつあいさつした後、日本催促一般試写会で鑑賞し、興奮冷めやらぬ観客から寄せられた質問に答えるティーチインが始まった。


―― エキストラというありそうでなかった題材を選んだ理由は?

 私がNHKに就職してドラマ部で助監督としてエキストラの担当をしていた時に、撮影現場であるエキストラの方が江戸の町人役として撮影したと思うと、次は侍姿に着替えてロケに行く姿を見てこの人の一日は面白いと思いました。また斬り合いのシーンで、一度倒れた侍がむくっと起き上がってまた別の侍として斬られているのを見て、驚いたと同時にその要素だけ切り取って映像化したら独特で面白いのではないかと。それを「5月」のアイディア会議に出した際にエキストラと現実の生活をまったく同じトーンでつなげていくと、どっちがどっちなのか分からない映像のサスペンスが生まれるんじゃないかと考えました。

佐藤 関が「エキストラが一度死んでもむくむくっと起き上がる」ということを言った時に僕はクラクラっと来てしまってこれをやろうとなりました。

―― 3人の役割分担はどのようなものでしょうか?

佐藤 よく聞かれるのですが、3人で一つなんです。全員でアイディアを出して、プロット、台本を書いて、編集して、音を付けている。言ってみれば3人で一人前なんです。アイディアを出す時に「これは面白いぞ」と思って自分は出しつつ、2人はどう思うのかということを考えるのですが、出した瞬間に2人が反応する前に「ああ、これはダメだ」と分かるんです。初めてカンヌに選出された『八芳園』を作った時に初めてこれを経験しました。アイディアは100案も200案も出しますが、良いアイディアを誰かが出した時に一瞬で「これだ!」と満場一致する瞬間があるんです。反応を見る前に分かるのがすごくおもしろいですね。3人でやると心強いということが多々ありますが、たくさんのアイディアが湧き出てきても、それが世の中にどういう役割を果たすのかというのが分からない時に、2人に伝えた瞬間に「つまらない」「面白い」が分かるんです。

―― 香川さん、津田さん、尾美さんなど個性的な名バイプレイヤーをキャスティングした経緯は?

平瀬 この企画が5年前に出ていたのにも関わらずこれだけ時間がかかってしまったのは、やはり主演が決まらなかったからなんです。映画の中ではエキストラとして存在感を消さなければいけない、ただ作品としては主人公なので物語を引っ張っていく存在感の強さが大切で、この矛盾する2面性を持ち合わせていることが必要でした。それを誰ができるのか分からなくてなかなか進まなかったのですが、香川さんのお名前が出たときに、瞬間的に3人で「香川さんならできる!」と思ったんです。普通だったら、この人がダメだったら次の人、みたいな感じで当たっていくと思うのですが、今回は香川さんがダメだったらこの企画はナシにしようという感じだったので、香川さんが引き受けてくださり、本当に良かったです。

佐藤 津田寛治さんに関しては、ある台詞を言うのが似合う俳優って誰だろう‥‥と考えた結果、津田さんを選びました。尾美としのりさんに関しては、作品を海外で上映したいと思った時に分かりやすく主人公と区別がつく人が良い=白髪の方がいいな、と思い、かつ演技や個性が好きな俳優さん‥‥と考えて尾美さんにたどり着きました。