安部公房の同名小説を石井岳龍監督が映像化した、映画『箱男』の公開日が決定し、あわせて、予告映像、ポスタービジュアルが公開された。
「砂の女」「壁」などその著作が世界で翻訳され、今なお熱狂的な読者を持つ安部公房。生前はノーベル文学賞に最も近いとされた、日本が世界に誇る小説家の一人。「箱男」は、そんな安部公房が1973年に発表した小説。その幻惑的な手法と難解な内容のために、長く「映像化は困難」と言われており、幾度かヨーロッパやハリウッドの著名な映画監督が映像化を熱望し、原作権の取得を試みたが、安部公房サイドから許諾が下りず、企画が立ち上がっては消えた。
そんな中、最終的に安部公房本人から直接映画化を託されたのは、『狂い咲きサンダーロード』で衝撃的なデビューを飾って以来、常にジャパン・インディ・シネマの最前線を走り、数々の話題作を手掛けてきた鬼才・石井岳龍(当時:石井聰亙)。安部からの「娯楽にしてくれ」という要望のもと、1997年に製作が決定。石井は万全の準備を期し、ドイツ・ハンブルグで撮影を行うべく現地へ向かったが、クランク・イン前日に撮影が突如頓挫、撮影クルーやキャストは失意のまま帰国することとなり、幻の企画となってしまった。
あれから27年。奇しくも安部公房生誕100年にあたる2024年、映画化を諦めなかった石井監督が遂に『箱男』の映画化を実現させる。主演には27年前にもキャスティングされていた永瀬正敏。永瀬とともにに出演予定だった佐藤浩市も出演を快諾。さらに、浅野忠信、数百人のオーディションから抜擢された白本彩奈が顔を揃える。
この度公開された本予告映像では、永瀬正敏演じる「わたし」が箱という鎧をまとい、完全な孤立、完全な匿名性を手に入れて一方的に世界を覗き見し、「箱男」になったと豪語する。だがそこへ箱男という存在を乗っ取ろうとするニセ箱男(浅野忠信)や軍医(佐藤浩市)、そして謎の女(白本彩奈)が現れ、箱男を消し去ろうとする。
小さな箱の中で王国を作り、守られた状態で世界を一方的に覗く箱男の姿は、小さな端末(スマホ)を手に持ち、匿名の存在としてSNSで一方的に他者を眼差し、時に攻撃さえもする現代の私たちの姿と重なってみえる。著書が発表された50年前に安部公房は現代社会を予見し、描いていたといえる。
また、本作は7月10日(現地時間)よりニューヨークで開催される”北米最大の日本映画祭”ジャパン・カッツへの出品が決定。今回は映画祭側の強い希望により、石井監督作品『水の中の八月』も特別に上映される。石井監督はの両作の上映日に登壇が予定されている。
映画『箱男』は、2024年8月23日(金)より全国公開。
完全な孤立、完全な孤独を得て、社会の螺旋から外れた「本物」の存在。ダンボールを頭からすっぽりと被り、街中に存在し、一方的に世界を覗き見る、箱男。カメラマンである“わたし”は、偶然目にした箱男に心を奪われ、自らもダンボールをかぶり、箱男としての一歩を踏み出すことに。しかし、本物の箱男になる道は険しく、数々の試練と危険が襲いかかる。存在を乗っ取ろうとするニセ箱男、完全犯罪に利用しようと企む軍医、“わたし”を誘惑する謎の女・葉子。果たして“わたし”は本物の『箱男』になれるのか。そして、犯罪を目論むニセモノたちとの戦いの行方は。
監督:石井岳龍
出演:永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、渋川清彦、中村優子、川瀬陽太
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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2024年8月23日(金) 全国公開