スティーヴン・スピルバーグの最新作で、自信が“映画監督”になる夢を叶えた原体験を描いた自伝的な作品、映画『フェイブルマンズ』。本作で美術を担当したのが、プロダクションデザイナーのリック・カーターだ。
彼は『アバター』(09)と『リンカーン』(12)でアカデミー賞美術賞を2度も受賞した経歴をもち、スピルバーグとは30年以上にわたり『ジュラシック・パーク』(93)や『宇宙戦争』(05)など11本の作品でタッグを組んだ。彼が手がけた本作の美術には、スピルバーグ監督も「映画を通して過去に戻ることができた」と語る。
そんなこだわりの美術の数々をとらえた特別映像を独占解禁。
特別映像では、カーターがスピルバーグの実妹らの証言も交えながら作り上げた、フェイブルマン家の美術セットの数々が映し出される。あまりの再現度の高さに思わず、スピルバーグも「復元された実家を見て込み上げる感情を必死で抑えた」「映画を通して過去に戻ることができた」とカーターの手腕を絶賛している。
本作の中で最も重要なセットは、フェイブルマン家の3つの家。カーターはこの3つの家を“映画の心臓”とみなし、それらの家の部屋は、サミー(ガブリエル・ラベル)の心理的、感情的、道徳的、芸術的な成長に何かしら寄与していると考えた。
そこで、彼のチームはスピルバーグ一家のアーカイブから大量の写真資料を集め、スピルバーグの子ども時代の家や行きつけの場所に足を運んだ。彼らが参考にしたのは、スピルバーグと妹たちの記憶であり、実際ニュージャージーとアリゾナの家のデザインは、スピルバーグが自身の記憶を頼りに描いた“小さな間取り図”がベースになっている。
一家の最初の家は、数ある部屋や家中の至る所に、サミーの隠れた日常と、彼の生活の隅々に及ぶ映画制作への愛がにじみ出るようデザインされたとカーターは語る。緑のリビングと赤をアクセントにした壁紙は、現実的な技術者である父・バート(ポール・ダノ)と情熱的な芸術家である母・ミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)の相反する性格と、2人のサミーへの影響を合理的に表現しているのだという。
2軒目の家は、細長い平屋建ての農場風家屋で、明るい砂漠色の風合いに、スピルバーグの母が愛した青色が散りばめられていた。バートのキャリアが飛躍的に向上するにつれて一家を西へ向かわせた、より広い文化的な暗示や野心に満ちた精神を表現したのだとか。
3軒目のフェイブルマン邸は、典型的な北カリフォルニアのクラフツマン住宅(緩い勾配の切妻屋根による大屋根形式の住宅)である。古めかしく、陰鬱で、控えめなデザインは、スピルバーグの子ども時代を参照したわけではなく、フェイブルマン一家の沈んだムードを反映するために選ばれたものだった。開封された引越し用の箱が散乱している様子は、一家が様々な意味で過渡期にあることを暗示しているのだという。
映画『フェイブルマンズ』は、3月3日(金)より全国公開。
50年にわたるキャリアの中で、史上最も愛され、変幻自在なフィルモグラフィを世界に送り出してきた巨匠スティーヴン・スピルバーグが、“映画監督”になる夢を叶えた自身の原体験を描く。初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になったサミー・フェイブルマン少年は、8ミリカメラを手に家族の休暇や旅行の記録係となり、妹や友人たちが出演する作品を制作する。そんなサミーを芸術家の母は応援するが、科学者の父は不真面目な趣味だと考えていた。そんな中、一家は西部へと引っ越し、そこでのさまざまな出来事がサミーの未来を変えていく・・・・。
監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ、セス・ローゲン ほか
配給:東宝東和
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2023年3月3日(金) 全国公開
公式サイト fabelmans-film.jp