Apr 16, 2021 news

舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』朝霧カフカ書き下ろし脚本による“もう一つの「DEAD APPLE」”の開幕レポート

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キャスティングがもたらした躍動感ある”文ステ”

今作では、敦、鏡花、芥川が乖離した異能を通じてそれぞれの「壁」と対峙し、それを乗り越えるさまが描かれている。2017年の初演以来、エバーグリーンな輝きを放ち続ける中島 敦役の鳥越。今回は敦の内面奥深くに芽生える苦悩に寄り添う姿を、見事に体現している。その過程で、乖離した異能力”月下獣”に立ち向かい、自らの過去を受け入れていく敦。ラストに鳥越が魅せる”生命の輝き”は、まさしく舞台ならではの熱量だといえる。

元ポートマフィアの暗殺者、泉 鏡花役・桑江が小柄な体躯を生かしながら舞台を縦横無尽に駆ける様子は”文ステ”シリーズではおなじみ。霧の中、鏡花は”両親の仇”である異能”夜叉白雪”と相対する。「鏡花の両親と”夜叉白雪”の真相」に触れ、本当の意味で自らの異能を取り戻す鏡花。鏡花の深い内面を表出させる桑江の熱演は、”文ステ”の新たな魅力となった。

その他の舞台写真を本記事末尾にて掲載中

今作において、映画と大きく異なって描かれるのがポートマフィアの2人だ。

橋本祥平演じる芥川は、異能を喪うという窮地にあっても、ブレることのない意志を以て任務にあたる。橋本の持つクールかつソリッドな魅力はこれまで同様、今作では、一層ストイックな芥川を好演している。また、植田圭輔演じる中也との絡みでは、これまであまり出すことのなかった‟後輩顔“もちらりと覗かせる。この点もファンがこれまで見たことのなかった”芥川像”となるのではなかろうか。

その中也は作中で八面六臂の大活躍を見せる。演じる植田圭輔の運動神経の高さはもちろん、特筆すべきは”文ステ”初となる「フライング演出」への挑戦だ。舞台表現が難しい「龍」との対決、異能力”汚濁”の発動を、プロジェクションマッピングとの合わせ技で見事に表現している。劇中歌に合わせた一連のステージングは、原作を見たファンであれば、その再現度に感嘆するに違いない。併せて今作では、原作にはなかったアクションシーンや、幹部然とした中也の一面が追加されている。アンサンブルとともに魅せる大立ち回りにもぜひ注目いただきたい。

その他の舞台写真を本記事末尾にて掲載中

その中也の元・相棒、太宰を演じるのは”文ステ”初登場の田淵累生。陰謀が渦巻く”骸砦”では冷静さが際立つ役回りだが、今作最後に見せた人間味あふれる表情が筆舌しがたいほど素晴らしかった。中也役・植田とも息の合ったコンビネーションを魅せ、これまでのシリーズで積み上げられてきた太宰の魅力をそのままに、さらなる奥深さをキャラクターに与えている。今作ではフョードル役・岸本、澁澤役・村田との”超人同士の騙し合い”を見事に演じきっている。

初登場はまだまだ続く。謎多き男、フョードル・D役に挑んだのは岸本勇太。フョードルは今作で超越的な策謀を企てる”魔人”。岸本が舞台に登場するたびに凍てつくような緊張感が漂い、空気がぐっと引き締まる。初登場とは思えぬほど場を支配しており、狡猾なフョードルを岸本。また、クライマックスに向け盛り上がる中、アンサンブルと魅せるダンスシーンにも注目だ。

そして圧倒的な存在感を示したのが、澁澤役の村田 充だ。今作ではこの世の全てに退屈を覚え、異常なまでに命の輝きに執着し、歓喜する澁澤。その気味の悪さを表情や立ち姿で表現しながらも、刹那的な美しさや寂しさも同時に醸し出す。澁澤という得体のしれない人物を見事に怪演し、人目を奪った。その澁澤と鳥越演じる敦のバトルは今作のクライマックス。澁澤の、まさしく”人間を超えた”超然たる振る舞いと、真っ向から対立する敦の「あがき、まよい、さけぶ」姿は、ぜひその目でご覧いただきたい。

その他の舞台写真を本記事末尾にて掲載中

文ステの特筆すべき点のひとつが、シンプルながらも高さと奥行きを生かした舞台美術や、驚きに満ちたアイデアの数々、森羅万象、何にでもなる変幻自在のアンサンブルの活躍と、不可能とも思われる場面を舞台上に出現させる中屋敷の演出力だ。本公演ではそれらがさらにパワーアップ、プロジェクションマッピングを効果的に用いた照明や迫力ある音響を駆使し、歌舞伎のようなケレン味も加わったスペクタクルな一大抗争劇を繰り広げた。そして高い身体能力と豊かな表現力を持つアンサンブルたちの人力による‟舞台装置”からも目が離せない。 8名とは思えない、変幻自在な様子はまさしく”文ステ”の華と言えるだろう。

本公演を十分に楽しむために…

本公演は原作映画を知らなくても十分楽しめるが、リンクする場面も織り込まれているので、ぜひ映画も観てほしい。また、舞台ならではの新たな視点が盛り込まれた今作は、映画を視聴したファンにこそ、見ていただきたいものでもある。その両方を知ることで作品世界により深く入り込めることだろう。

舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』大阪公演は4月18日(日)まで上演。4月23日(金)より東京・日本青年館で開幕、5月5日(水・祝)まで上演する。東京公演では、全16公演をライブ配信もするので、舞台と配信のハイブリッドでその魅力を堪能できる。

全15名のキャストが舞台上で織りなす”赤き果実”。是非ご賞味あれ。

舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE

原作:映画「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)」
脚本:朝霧カフカ 脚本協力:内田裕基 演出:中屋敷法仁 協力:春河35
【出演】
中島 敦役:鳥越裕貴
泉 鏡花役:桑江咲菜
芥川龍之介役:橋本祥平
中原中也役:植田圭輔
太宰 治役:田淵累生
フョードル・D役:岸本勇太
澁澤龍彦役:村田 充
大石 樹  岡村 樹  山中啓伍  有光麻緒  浦島優奈  小野塚茉央  小林らら  美守 桃

音楽:岩崎琢/ 振付:スズキ拓朗/美術:中西紀恵/ 照明:吉枝康幸/ 音響:山本能久/ 映像:荒川ヒロキ/ 衣裳:前岡直子/ ヘアメイク:古橋香奈子/ 殺陣:六本木康弘/ 演出助手:入倉麻美/ 舞台監督:川除 学/ 宣伝美術:水野沙弥香(Gene&Fred)/ 宣伝写真:上村可織(Un.inc)/ WEB制作:Gene&Fred/ 宣伝:ディップス・プラネット/ 音楽制作:ランティス
企画:舞台「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE」製作委員会
制作: バンダイナムコライブクリエイティブ/ゴーチ・ブラザーズ
Ⓒ舞台「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE」製作委員会