おじいちゃん・おばあちゃんとはLINEでよく会話しています
──そして、クライマックスのコンサートシーンは、細川監督も「黒島さんの表情で観客を泣かせたい」と思っていたそうですが。
演奏を聴いているシーンではあるんですが、私の前にはカメラしかなくて、実際に向こう側で演奏をしているわけではなかったんです。でも、撮影も終盤だったし、曲を聴きながら今までのシーンを頭の中で振り返っていたら、自然と感動できたんです。その時、音楽ってすごいなと思いました。
──音楽によって感情が高まったと。
はい。あの演技は音楽に助けられました。音楽が私の感情を全部引き出してくれたと思います。そして、それが完成した映画でコンサートのシーンと重なっているのを見た時は感動しました。
──さて、映画ではさまざまな“老人”が出てきますが、黒島さんのおじいさん・おばあさんはどんな方ですか?
母方のおじいちゃん・おばあちゃんは、私が住んでいた沖縄の家のすぐ近所に住んでいるので、小さい頃は保育園の送り迎えをしてもらっていました。おじいちゃんが大きなトラックを運転する仕事をしていたので、その助手席に乗せてもらってドライブをしたり、2~3歳の頃は自転車のカゴに乗せてもらって散歩したりしていました。父方のおじいちゃん・おばあちゃんは石垣島に住んでいて、昔は夏休みの1か月間くらい泊めてもらって、一緒に畑に行ったり、お祭りに行ったり…思い出はたくさんありますね。
──黒島さんが上京してからは、なかなか会えていないのでは?
でも、この前石垣島に帰ってドライブをしたりしました! 仲も良くて、電話も掛かってきます。おじいちゃんやおばあちゃんとか、親戚がみんな入っているLINEのグループがあるんですよ。「今日は誰々が運動会でした」とか、「畑でパイナップルが取れました」とか、日常的な会話はそのLINEでしていますね。
──おじいさん・おばあさんもスマホを使いこなせるんですね!
LINEとカメラくらいしか使えないらしいですけどね(笑)。
──ところで、女優という仕事をする上で影響を受けた映画や音楽、本など、エンタメ作品にはどんなものがありますか?
『キツツキと雨』という映画です。私がまだ事務所に入ったばかりで、全然仕事もなくていろいろとオーディションを受けていた時期に、ぜひ見てほしいと言われて見たんですけど、すごく影響を受けましたね。地方の山の中で低予算のゾンビ映画を作るお話で、最初はいろいろと問題があって気持ちがまとまらなかったのが、役所広司さん演じる木こりによって、みんなが1つの方向に向かっていくんです。最後に映画を撮りきった時の表情には感動しましたし、みんなで1つの作品を作り上げるのは素敵なことだと思いました。
──協力して作品を作り上げていくことの素晴らしさを学んだ、と。
そうですね。『キツツキと雨』を見て、“自分は自分のお芝居をするだけ”という気持ちが変わりましたし、改めて「お芝居っていいな」と思うようになりました。
──その黒島さんが、今後目指すところはどこでしょう?
私はこのお仕事が好きですし、ずっと続けていきたいと思っています。今後出会う作品や人によってさらに影響を受けると思うので、具体的なことはまだ分かりませんけど、とりあえず今は目の前のことに対してベストを尽くして地道に頑張っていけば、またその先も広がっていくんじゃないかなと思うし、いずれは自分が納得できる自分になれるんじゃないかなと思っています。
──では最後に、改めて『オケ老人!』の魅力をお願いします。
笑って泣けて、自分がやりたいことを純粋に楽しんですることの幸せや大事さに気付くことのできる映画だと思います。皆さんにぜひ早く見ていただいきたいです!
ヘアメイク:武田尚子(メランジ)
スタイリスト:伊藤省吾
取材・文/左藤 豊
撮影/吉井 明
黒島結菜(くろしま・ゆいな)
1997年3月15日生まれ、沖縄県出身。2012年に『ひまわり~沖縄は忘れない、あの日の空を~』で映画デビュー。2014年には『孫のナマエ~鴎外バッパの命名騒動7日間』でテレビドラマへも出演し、『アオイホノオ』(14年)や『ごめんね青春!』(14年)、大河ドラマ『花燃ゆ』(15年)などにも出演。主な映画出演作に『呪怨―終わりの始まり―』(14年)、『ストロボ・エッジ』(15年)、『あしたになれば。』(15年)、『ストレイヤーズ・クロニクル』(15年)、『atHomeアットホーム』(15年)、『流れ星が消えないうちに』(15年)など。2016年7月期ドラマ『時をかける少女』で連続ドラマ初主演を果たしたほか、2017年春には主演映画『サクラダリセット 前篇/後篇』の公開も控えている。
『オケ老人!』
クラシック好きの高校教師と平均年齢が(おそらく)世界最高齢のアマチュア・オーケストラの笑いと涙に包まれた奮闘と青春を描く。梅が岡高校に赴任してきた数学教師の千鶴(杏)は、バイオリン演奏の経験を活かすべくその町のプロ並のアマオケに入団…したつもりが、入った先は年寄りばかりで素人丸出しの“梅が岡交響楽団”(梅響)だった。「楽団名を間違えた」と言い出せず参加することになり、さらにはバイオリンを弾きたくて入団したはずがなぜか指揮者として梅響を引っ張るはめに…? 映画初主演の杏が老人たちに振り回されるコミカルな役を演じ、女優として新境地を拓く!
原作:「オケ老人!」荒木源(小学館文庫刊)
脚本・監督:細川徹
出演:杏 黒島結菜 坂口健太郎
左とん平 小松政夫 藤田弓子 石倉三郎 茅島成美 喜多道枝 森下能幸
萩原利久 フィリップ・エマール 飛永翼(ラバーガール)/光石研 笹野高史
製作:「オケ老人!」製作委員会
配給:ファントム・フィルム
11/11(金)ロードショー
公式サイト
http://oke-rojin.com
(C)2016荒木源・小学館/「オケ老人!」製作委員会
「オケ老人!」荒木源/小学館
老人ばかりで構成された平均年齢おそらく世界最高齢のアマ・オーケストラ「梅が丘交響楽団」に間違って入り込んでしまった高校教師・中島は、皆から指揮者になってくれと懇願される。その後、人気アマオケ「梅が丘フィル」との確執、ロシア人指揮者・ゴルゴンスキー来日騒動を経て、話は日本とロシアの国家機密情報漏洩にまで発展して…? 『ちょんまげぷりん』の作者が描く、笑いあり涙ありのハートフルストーリー。
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映画『キツツキと雨』
ゾンビ映画の撮影で山村にやって来た気弱な新人映画監督の幸一(小栗旬)と、それを手伝わされることになった木こりの克彦(役所広司)。森の中で出会った2人が、年齢や価値観を超えて心を通わせ合う姿をハートウォーミングに描くコメディー映画。監督・脚本は『南極料理人』でデビューし新藤兼人賞金賞を受賞した沖田修一。克彦の息子役の高良健吾に加え、山崎努、伊武雅刀、嶋田久作らベテラン俳優陣が脇を固める。
「キツツキと雨 ユートピアを探して」沖田修一/角川書店
第24回東京国際映画祭審査員特別賞などを受賞した映画『キツツキと雨』の前日譚を、映画でメガホンを取った沖田修一が自ら書き下ろし。ゾンビ映画のロケハン部隊と、彼らが撮影のベストスポットを求める最中に出会った町役場の観光課職員とのやりとりを、ユーモアたっぷりに描く。作中で描かれるゾンビ映画『UTOPIA~ゾンビ大戦争』のシナリオも収録。