ツチヤと岡山、西寺と仲野
ーー本作でのお気に入りのシーン、ここは観てほしいというシーンはありますか?
仲野 どのシーンをとっても本当に天音が素晴らしいんです。天音が感情を爆発させて、ブチ切れるシーンも涙するシーンも本当に最高なんですけど、西寺が「お前ジュース買ってこいよ」って言って、歩いていくツチヤの背中を見ていると、ツチヤがこけるという描写があるんです。そのときの天音の芝居がすごく好きですね。
他にもいっぱいあるのに、なんでそんなところって思うかもしれないんですけど、セリフもないし、表情も見えなくて、背中しか見えてないのに、そのツチヤのこけ方がなんだか妙に愛おしかったんです。なおかつ、こいつこのままで大丈夫かな?ってちょっと不安になるような、ツチヤという人物をセリフや表情が無くても、体現してしまう天音の凄さみたいなものに、感動しましたね。これは、なかなかできることではないなと思ったし、さっきも「あれどういう感じでやったの?」って聞いていたんですよ(笑)。
ーーあそこはツチヤを愛せるシーンでしたね。とても印象に残っています。
仲野 それまでの流れで、ずっと張り詰めたものがツチヤの中にあると分かった上で、この人ってこういう人なんだろうな、っていうのが見えてくる。それがすごく素敵だなと思って。
岡山 あのシーン、クランクアップの日だったんですよね。
仲野 そうだね。
岡山 あの日、仲野さんロスがやばかったです(笑)。
ーー岡山さんはいかがですか?
岡山 やっぱりツチヤにとっても、西寺さんとの時間っていうのは、一瞬一瞬がものすごく大切な時間だっただろうし、同じように僕にもそういった時間として残っているので、選ぶのは難しいですね。
でもひとつ、今の気分であげるなら、ベーコンズ単独ライブの漫才のシーンですかね。
お客さんがみんな笑っている中、自分が書いたネタで西寺さんが漫才をしている。それを同じ場所で同じ客席でツチヤも見ている。あんまり本編では使われていないんですけど、実はずっとフルで漫才を見ていたんですよ。
監督の演出で本番以外、通しで漫才を見ていなかったのもあってか、あのシーンは、会話や何かエネルギーのやりとりを目に見える形でしているわけじゃない。けど、ものすごく受け取ったものがありました。これまでお芝居した中でもあまり味わったことのない感覚でしたね。ただ傍観しているだけだけど、自分の中で強烈な何かが立ち上がっていく感じというか‥‥台本上では、漫才を観ているだけのシーンなのに、こんな気持ちになるんだなって、思い出深いです。まぁ、僕の顔はあんまり使われてないんですけどね (笑) 。