作品ごとに全く異なる顔を見せ、日本映画界を牽引する俳優・菅田将暉。人気コミックを映画化する『となりの怪物くん』では、不器用かつ愛らしい主人公・吉田春を熱演している。今作の原作を読んで感じたことや、演じて「勇気が出た」と語る春について、「趣味を通して仲良くなれた」という共演者との交流、春の兄・優山役の古川雄輝と久々に再会した時のエピソードなど、たっぷりと話してもらった。さらに、「毎日読んでいる」というマンガや、少女マンガに思うことなども聞いた。
個性がありながら「何かが欠けている」登場人物たち、“怪物くん”吉田春の魅力
──『となりの怪物くん』の原作を読んでみていかがでしたか?
純粋に面白かったです。登場人物全員がそれぞれに個性があるだけでなく、何かが欠けているんです。でも、そう思うのは、全員がすごく素直だからなんですよね。今の時代、言いたいことがあっても、口にしないことが多いと思うんです。周りに気を使ったり、状況や環境を考えて、本当に言いたいことがあっても言わなかったり…。でも春と雫(土屋太鳳)は、本当に素直に自分が思ったことを言うんです。
──確かに、春と雫は、相手が気にしているようなことでもズバッと発言しますよね。
はい。そのせいで孤立してしまって、生きにくくなっているんです。なので、読みながら感情移入することが多く、「この人たちが全員幸せであればいいな」と思っていました。
──実際に春を演じて、どんなことを思いましたか?
勇気が出ました。そんなどこかが欠けている皆でも、それぞれ生きていた人生が交錯して、ちゃんと仲間になれたことは、すごく素敵なことだと思いました。
──春は、一見怖いですが、仲良くなるとすごく心を開いてくれる“いいヤツ”ですよね。
そうなんですよ。はたから見ると、確かに怖い部分もあるんですが、人を殴るのにも必ず理由があるんです。それに、生まれつき優れているせいで、家系の悩みも出てきてしまって、本当はすごく寂しかったんだと思います。だからこそ、頭が良いことを褒められたところで、全く嬉しいとは思えないんです。それよりも、家まで学校のプリントを持ってきてくれる雫や、利用されていたとしても春と向き合ってくれた不良の連中に献身的な愛を見せていたんです。きっと、小さな頃から一番求めていたのは、そういった“温もり”だったんでしょうね。
他の現場では意外としない、“趣味の話”で仲良くなれた芸術肌の共演者たち
──青春を謳歌するようなシーンがたくさんありましたが、オフでは共演者の皆さんとどう過ごしていたんですか?
現場ですごく仲良くなれました。とても不思議な座組で、キャスト全員が、音楽が好きだったり、芸術肌の人が多かったんです。太鳳ちゃんもダンスをしていますし、(春のクラスメイト・佐々原宗平役の佐野)岳も、プライベートで海外に写真を撮りに行くほどカメラが好きだったんです。それに、(友人・夏目あさ子役の)池田(エライザ)さんも本当に音楽が好きで、僕の知らない洋楽やジャズを教えてくれましたし、(春の元同級生・山口賢二役の)山田(裕貴)も歌がとても上手くて、「ギターを始めたい」と話していて。こういう趣味の話って、意外と他の現場ではしないので、すごく面白かったですね。
──趣味の話をするとグッと距離が近づきますよね。
そうですね。それは『となりの怪物くん』で、皆が仲間になっていくのにすごく近いような気がしました。