Sep 01, 2019 interview

大友良英に聞く映画&ドラマの音楽制作の裏側、いまもなお影響を受けている一冊

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音楽はメッセージを伝えるためにあるものではない

――劇伴を作る際に大友さんから何か提案されることもありますか?

こちら側から最初に「こういうのはどうですか?」と言うことはまずないです。相手の出方を見てから考えるので、ある意味、卑怯ですよね(笑)。事前にもらった脚本や映像にも手掛かりはたくさんあるし、役者さんのちょっとした目の動きひとつからヒントをもらうこともあるけど、一番重要なのは監督がどうしたいかということ。まず監督がどっちの方向を向いているのかを最初に掴むようにしています。提案するのはそのうえで、になります。実際には細かいやりとりもありますが、最終的な提案は作り上げた音楽そのものってことになるのかな。

――音楽家として表現される音楽と劇伴では、はっきり線引きしながら作ってらっしゃいますか?

はっきりと分けて作っています。なぜなら劇伴は“この映画を作りたい”という監督の動機に対して作られたもので、僕はそこに伴奏者として参加しますけど、自分の音楽表現のために映画を利用したりしないからです。それにそんな欲望もないですね。劇伴を作ることで映画やドラマが良くなればいいなという意識でやっています。

――大友さんは最近、SNSで社会的な問題に関する考えなどを発信してらっしゃるので、ご自身の音楽にもそういったメッセージのようなものを込められているのかなと感じたのですが。

この作品に関しては一切そういったメッセージは込めていないです。というのも、音楽はメッセージを伝えるためにあるものではないと思っているから。何かを伝えたいなら直接誰かに電話して伝えたほうが早いですよね。もちろん映画で流れることによって劇伴がその作品のメッセージを伝える助けをすることはあるけど、音楽単体では、歌詞がついた歌以外はメッセージを持ちにくいと思います。もしそういうことが起こるとしたら、聴いている人が勝手にそう感じることしかないかなと。だから映画との相乗効果でなにかに聴こえることはもちろんあり得ます。でも基本、そこを狙ったりはしてないですね。

――たしかに歌があるものとそうじゃないものでは受け止め方もまったく変わってきますよね。

歌詞というか、言葉って良薬にもなるし劇薬にもなると思っていて、例えば極端なことを言えばジョン・レノンの『イマジン』のような名曲に、もしもヘイト的な歌詞を乗せたものがいい感じに聴こえて流行ってしまったらとても危険ですよね。どんなに素晴らしいメロディーでも恐ろしい歌詞がついて、それが流行歌になればとんでもないことになる。だから音楽はメッセージを伝えるものって考え方、素直には乗れないし、自分はそういうことはしたくないって思ってます。

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